夜が明けたら、きみに。

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ここを出たら、まず何をしようか。 ここを出たら、まず誰と会おうか。 思いついたのは、もちろん一つしかない。 仕事も上司も、もうどうでもいい。 言葉もいらない。 駆け寄って、ぎゅっと抱きしめて。 つぶれるくらいキスをして。 会いたい。 くすくすと笑うあの顔に。 まとわりつくように覆っていた暗闇が収縮していき、光に満ち溢れた世界が、開いた。 瑞々しい空気。 鳴り止まない拍手。 集まっている人々の歓声。 「午前6時2分!」 誰かが、高らかに俺の救出時間を告げる。 やっと、出られた。 外で待っていた人々に、俺は歓喜の声をあげた。
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