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事前に龍之介からチキンが好きだと聞いていたので、メインはチキンソテーのトマトソースがけにした。あとはブロッコリーとベーコンの炒め物とパスタサラダ。本当はスパニッシュオムレツにも挑戦したのだったが、焦げたりぐちゃぐちゃになったりして散々だったので捨ててしまった。そんなことより、テーブルのすぐ横はベッドだ。どうしても意識してしまう。
テーブルを挟んで座り、龍之介はビール、糸恵はグレープフルーツ味のお酒で乾杯をした。
思わず勢いよく飲んでしまい、胸の辺りが少し熱くなる。口の中がカラカラだったのだ。龍之介もくっくっくっと喉に流し込んでいた。
プレゼントはいつ渡そう。食べる前の方がいいだろうけれど、向こうが先に差し出すのを待った方がいいのだろうか。けれど龍之介は「いいなあ。俺も一人暮らししたいなあ」とか言いながら、初めて来た糸恵の部屋を見回したりしている。
別にどっちが先に出したっていいだろう。糸恵は膝立ちして手を伸ばし、本棚の上のリボンのついた紙袋を手に取った。きちんと座りなおして、龍之介へ差し出す。
「りゅう、誕生日おめでとう。これ、私から」
中に入っているのはマフラーだった。人気のメンズブランドのものだが、定番のものよりも色や柄は控えめで、少しボリュームのあるものを選んだ。龍之介なら何でも似合うだろうけれど、まだ彼の好みをそんなによく知っているわけではないので、気に入ってくれるか不安はあった。
「どう? 似合う?」
龍之介はさっそく首に巻いて、ちょっと照れくさそうに聞いた。
「もちろん似合う」
「俺もそう思う」
笑顔を交わす。
次は龍之介の番だ。いったい何をくれるのだろう。だが彼は、自分の横に置いた紺色の紙袋をマフラーに埋もれた顔で見つめたまま、なかなか手に取ろうとしない。どうしたと言うのだろう。
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