5 王子様との結末

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5 王子様との結末

 彼女として龍之介の隣にいることは幸せだったし、優越感を感じずにはいられなかった。けれど、それと同じくらい不安でもあった。  陰で、時には聞こえよがしに、地味だのブスだの田舎者だのと悪口を言われることもあったし、糸恵と付き合いだしてからも、彼には近づいて来る女の子が後を絶たなかった。  龍之介は「派手な女は好きじゃない。俺はナチュラルなかわいさが好きなの。糸恵が好きなの」と言ってくれたけれど、糸恵は、自分なんか、という思いをいつもどこかに抱えていた。  次の年の誕生日も、その次の年も、糸恵と龍之介は一緒に過ごした。それでも糸恵はやっぱり不安だった。  龍之介がまるでモデルみたいな女の子と話をしているのを見てしまったりすると、自分なんかよりずっとずっとお似合いだと思った。そして、周りにはあんな魅力的な子がいっぱいいるのに、私のことをいつまでも好きでいてくれるはずがない。きっといつか彼はそんな魅力的な人のところへ行ってしまうのだと、いつしか自分に言い聞かせるようになった。常にそう思っていれば、いざその時が来ても落ち込まずにすむ。できるだけ傷つかないように、知らず知らずのうちに予防線を張っていたのだった。
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