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残りの数日は、ごくごく穏やかに過ぎた。内藤も姿を見せなかった。 彼女は、終始穏やかで、そしてなんだか朗らかだった。 一度だけ、彼女の誘いで、突然ドライブに出かけた。思い出の海岸で写真を撮った。 最後の日の昼下がり、ゆき子は窓際でネコガミに話しかけている。 「ありがとう。」 また何か願いが叶ったようだ。ネコガミの真実も彼女には隠しておこう。 つけっぱなしのテレビでテニスの試合が始まる。ゆき子はまだネコガミと戯れている。僕の興味が画面に移る。 テニスの試合に夢中で時を忘れた僕に、ゆき子が声をかける。 「ねぇ、こっちで一緒に食べない?」 (…もうそんな時間か。) 最後の日だと言うのに、特別なこともせず、それぞれの時間をまったり過ごしてしまった。逃避…なのかな。 食卓には僕の好きな和風ハンバーグ。 「あげないよ。猫は玉ねぎダメなんだから。あなたはこっち。」 ちょっとゴージャスな今の僕にとってのごちそうが差し出される。 (しかたないなぁ…) 「そんな顔しないっ。」 ゆき子がコロコロと笑う。 何も知らずに、ゆき子は明日からもこうしてソーセキと暮らすのだろう。中身が変わったことなど気づかずに。それも、いいのかもしれない。今更改めて悲しい思いをさせることはない。
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