Ⅲ-20 ふたりいっしょなら

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「この世界から消し去る。目を瞑るたびチラつくんだ。そのムカつく顔消してやるよ」 「その願いはいつからだ」 「お前がCold Boarを辞めると言った瞬間から──最初は怒りだけだったが生きていくうちに気付いた。怒りとは違うな、これは」 「僕はエルネスティーに対して同じ気持ちを抱いた。僕は逃げた。逃げて他の人に任せてきた。やっぱり僕ら似てるな。一番最初に声を掛けたのもトワイズだった」  トワイズの刃を横に避けたエリクが袖から隠しナイフを取り出した。そのままがら空きの横腹に深々と突き刺さった。途端に呻き声を上げ距離を取るトワイズにエリクは追撃のダーツの矢を投げ、その全てが筋や腱のある部位に突き刺さって彼は地に伏した。 「こ、の老耄(おいぼれ)が……っ」 「ダーツの腕だけは達者だった。こいつには何度か救われた。教えてくれたトワイズには感謝してる」 「俺の特技はペテンだ……」 「そうだったな」  エリクはトワイズの胸ぐらを取って首に刃を当てた。 「僕の邪魔するからだ。報いを受けろ」  首に刃がくい込んだ瞬間マルールが動いた。素早く上体を起こしライフルでエリクを捉え、その肩を吹き飛ばす。その間にマルールは刺さっていたナイフを抜き取り、這い進む私を背負ってその場から一目散に離れた。 「マルール……」  走るのに一生懸命なのか答えない。後ろから声が聞こえた。 「いい加減にしろよ……!」  エリクが隠し持っていた拳銃をこちらに向けていた。しかし引き金が引かれる瞬間、起き上がったトワイズが彼に覆いかぶさり銃弾は全て防がれた。マルールはなおも走り、二人から遠ざかる。 「レティシアぁ……!」その声に足元が揺らいだ。立ち止まろうとしたのかもしれない。けれど彼女は止まらなかった。 「この……親不孝者がよぉ……」  その瞬間、エリクの叫び声が細く、長く聞こえた。  声も、マルールの息遣いも、次第に何も聞こえなくなって、私もそこで意識が途絶えた。
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