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「桐生くんっ!」
朝礼が始まる前、医師詰所で、匡久は誠志郎に声をかけた。
誠志郎は、一歩、後じさり、警戒するように匡久を見る。
「何です、院長」
「あ。君、今、僕が何か無茶振りすると思ってるだろ」
「はい」
「……。なあ、今日も郁ちゃん弁当?」
「そうですよ」
その呼び名はやめてほしい、と誠志郎の目が訴えている気がしたが、匡久はそれは無視した。
「今日、時間あったら、昼めし一緒に食べない?
天気いいしさ、久々に屋上で食べようよ」
「私はかまわないが。何時にしますか?」
「今日は外来ないし、たぶん十二時で大丈夫だと思う。
でも、君も詰所に来るだろ。それから一緒に行こうよ」
C棟の屋上は、院長室の奥の非常階段を昇ってすぐだ。
エレベーターは屋上には通じていない。
そのためか、職員もほとんど誰も来ない。
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