1. 奏の焼きそばパン

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「僕、昼休みに図書室に行くんですよ。そのとき、奏くんのクラスの前を通りますから」  全然気づかなかった、と奏が思ったとき、郁人は言った。 「良かったら僕、明日から奏くんのお弁当も作ってきましょうか?」 「は?」 「僕、毎朝、自分のお弁当、自分で作ってくるんです」 「え、そうなんだ?」 「ええ。ですから、もしよければ。二人分でも三人分でも大して違いませんから」 「三人分?」 「今、父の分も作っているので、奏くんで三人分です」 「……へ、へえ。うーん。ありがとう。でも、やっぱりいいよ……」  友達から毎日お弁当を渡されるのは、奏にとっては、半額のお弁当を食べるのと同じくらい恥ずかしい。  それにもちろん、郁人に迷惑をかけるのも気が進まない。 「郁人は偉いんだねえ」 「いえ。もとから母との約束でしたから。それに、慣れるとお弁当作りも楽しいですよ」  にこにこと郁人は言う。きっと本心なのだろう。  そこがまた偉いんだよなあ、と奏がしみじみ感心していると、郁人は言った。 「でも奏くん、毎日パンだけ食べるのはやっぱりよくないと思いますよ。  それ、炭水化物しか()れませんから」 「一応、焼きそばも入ってるんだけど」 「焼きそばも炭水化物だと思いますが」 「……そういえば、そうだねえ」  ちょっぴりお肉とキャベツが入っているのを、奏は過信していたのだ。
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