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「僕、昼休みに図書室に行くんですよ。そのとき、奏くんのクラスの前を通りますから」
全然気づかなかった、と奏が思ったとき、郁人は言った。
「良かったら僕、明日から奏くんのお弁当も作ってきましょうか?」
「は?」
「僕、毎朝、自分のお弁当、自分で作ってくるんです」
「え、そうなんだ?」
「ええ。ですから、もしよければ。二人分でも三人分でも大して違いませんから」
「三人分?」
「今、父の分も作っているので、奏くんで三人分です」
「……へ、へえ。うーん。ありがとう。でも、やっぱりいいよ……」
友達から毎日お弁当を渡されるのは、奏にとっては、半額のお弁当を食べるのと同じくらい恥ずかしい。
それにもちろん、郁人に迷惑をかけるのも気が進まない。
「郁人は偉いんだねえ」
「いえ。もとから母との約束でしたから。それに、慣れるとお弁当作りも楽しいですよ」
にこにこと郁人は言う。きっと本心なのだろう。
そこがまた偉いんだよなあ、と奏がしみじみ感心していると、郁人は言った。
「でも奏くん、毎日パンだけ食べるのはやっぱりよくないと思いますよ。
それ、炭水化物しか摂れませんから」
「一応、焼きそばも入ってるんだけど」
「焼きそばも炭水化物だと思いますが」
「……そういえば、そうだねえ」
ちょっぴりお肉とキャベツが入っているのを、奏は過信していたのだ。
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