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翌朝、水曜日。
変なことを聞かれたせいか、朝の五時過ぎに目が覚めてしまった。
うちは二階建ての一軒家で、僕の部屋は二階にある。部屋着のまま、たまには早朝の空気を吸おうと、玄関から外へ出た。
ふと見ると、門の下に包みが置かれている。紙袋の上辺に、カードが貼り付けてあった。
<上郷くんへ。これは誰かの落し物です。拾った人が好きにしてください。落とした人のことは、もう考える必要はありません>
中身は、あの赤いプリーツスカートだった。
誰のものかは、考えるまでもない。
もう一度手紙を読み返して、背筋に悪寒が走った。
気がついた時には、僕は駆け出していた。
昨日までは普通だったのに。
誕生日の少し前になったら教える。その「少し」を、僕は勝手に、数日前くらいかと思い込んでいた。
――来週まで――ずっとだっきにって言い続ける期間らしい――
――今繰り返している言葉は――入滅するための準備――
僕は馬鹿だ。急激な情報過多のせいで圧倒されて、思い至れなかった。
あの時点での来週とは、今週を指すのだろう。そして、今週のいつまでのことなのか。
「少し前って、少しにも程があるだろう!!」
三輪の団地に到着した僕は、階段を駆け上がり、三輪の家のドアを引き上げた。幸い、鍵はかかっていなかった。
証拠はないが、三輪が開けてくれていたのだと思った。柄でもないお節介を働く同級生に、三輪に関わる余地を残してくれたのだと信じた。
玄関には、三輪のものだろうローファーがある。三輪はこの家にいる。
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