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「佐竹ちゃん、私と一緒に住も」 俺の口から思ってもいなかった台詞が出た。 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をしている佐竹ちゃん。 そうだろう、俺だって驚いてる。 身辺調査から彼女がアクセスの悪いとこに住んでる事は知っていた。住居はどうにかせねばと考えていた。 専属マネジメント契約を結んだものの、無理くりチイに頼んだので人手が足りない現状。専属マネージャーをつけるのは厳しいと言われた。 だからと言って彼女を放置する訳にはいかない。 彼女には俺の母と同じ匂いがする。容姿は普通なのに人を惹き付ける何か。 管理しなければ、翔瑠のように無駄に寄ってくる人間が出てくる。 共鳴しそうな2人を先程見ていたせいか、思わず口から衝いて出た。 俺は自分の中の負の感情から目を背け、恋愛相手と距離をとるなんて馬鹿な事はしない。 負の感情も含め丸ごとドップリ味わう、それが生きてる醍醐味。 だけど、男と女には考え方の相違があるのも事実… 俺が高校2年生の時、母が自分の店を持った。 酒類を納入する取引先を探すにあたって、珍しくとある商店街に俺は連れていかれた。 空手をやってた時は短髪にしてたが、高校に入り俺は髪を伸ばし染めていた。軽い天パなのでいつも風紀と揉める。 風紀担当の女教師を弄る為にわざとだ。 夕暮れ時、商店街が一番活気付く時。 一軒の酒屋の前で母は立ち止まった。 俺は髪をくるくる指先で玩びながら、何気に店構えを見た。『菊池酒商店』 この時間、配達は終わったのか静かな店内。客が一人レジで会計をしてるだけだ。 「チイちゃ~ん!」 俺の脇を、後ろの豆腐屋から出てきた女の子が通り抜けた。彼女は酒屋の自動ドアが開くのももどかしいのか、勢い良く飛び込む。 客で隠れてた店員が見えた。 彼女と話し込む店の者は、俺と同じ位の年齢の男子で天然パーマ。遠目でハッキリしないが目元が俺と似てる気がした。 それが園田の息子、俺の弟、園田智生だった。
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