46人が本棚に入れています
本棚に追加
今も、この日の母と智美さんの会話を覚えてる。それだけ衝撃的な内容だったのだ。
母と俺と彼女は、商店街の中にあるビーンズという喫茶店に入った。
母の隣に座り『昔話するのに俺、必要?』って小声で尋ねると、
「居なさい。これからの話だから」
と??疑問符だらけの答えがきた。
三人分の珈琲が来る前に、女2人の静かな綱引きが始まった。
「園田は相変わらず?」
「ええ、元気にしてるわ。でも何で私が実家にいるって知ってたの?」
「ふふ。これでも色んな方とお付き合いあるのよ」
彼女は俺の顔を盗み見る様にして
「清良…結婚したの?」
「してないわ。幹は一人で育てたの」
息をのむ彼女を直視しながら、母は続けた。
「気付いたと思うけど、園田の子よ」
「父親はいないんじゃなかったのかよ?!」
俺が今まで何度父の事を聞いても、だんまりだったのに突然俺にではなく、昔の友人らしい女性に打ち明ける、涼しい顔の母にブチキレた。
そこへウェイターが珈琲を持ってきて、俺の怒りに水が差された。
「生物学的に居ない訳ないでしょ?」
カップに口をつけながら冷静な母と反対に、智美さんの手は小刻みに震えてた。
「…園田は知ってるの?」
「教えてないから、知らないんじゃない」
俺は拳を膝の上で強く握った。
「智生より年上よね?いくつ?」
俺を見る彼女の目が冷たい。答えようとする俺を遮り、
「認知してくれって話しじゃないわよ」
母が鷹揚に言う。
智美さんは唇を噛みしめ、
「じゃ、何故今頃?」
そう、それは俺も聞きたい。
最初のコメントを投稿しよう!