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俺と智美さんの視線を浴びながら、平然と珈琲を飲む母に苛々する。 父親が居なくて不自由する事はなかったが、何故今、俺と相手の家族を引き合わせるのだ?母の真意が分からない。 「2人共コワイ怖い」 母は肩を竦めたと思ったら身を乗り出し、人差し指で智美さんの顎を持ち上げた。 「いつまでも実家の穴蔵に隠れてるお姫様にカツを入れる為?」 彼女はカッとして、母を払う。 「ふざけないで!」 「ふざけてないわ。実際そうでしょ?園田の側だと感じる嫉妬や引け目から無縁な商店街に逃げ込んだでしょ? …愛する人から逃げる気持ち、分からない事もないんだけどね…」 婉然と笑いながら言った最後の方の台詞は、隣にいた俺にしか聴こえなかっただろう。 「園田の会社評判良いみたいだから、この子をお願いしようと思って。高校出たら美容関係に進みたいらしいから」 目線を爪に落とし、その毒々しい色合いと装飾具合を確かめる母に、 「余計な事すんなよ!」 俺は吠えた。 店内全員の視線を集め、智美さんは咳払いをした。 「それだけ?幹君の存在を明かしに来た理由…」 「店番してたあの子みたいに頭良くないしね。手に職の実践積む近道があるって思い出しただけよ」 腹の底を探り合う空気に、先に根をあげたのは智美さんだった。俯きながら 「てっきり彼を取り返しに来たのかと」 「はあ?」 あ、マズイ…母のコレが出た時は要注意だ、嵐の前兆。 「昔…清良、園田と仲良かったから」 「自分の夫と仲良い人間は皆、夫を愛してるって?随分園田の魅力を買い被ってるのね」 「…」 バツが悪いのか恥ずかしそうに頬を染める智美さんに、本格的に怒気を孕んだ声音で母は、 「スペアよ」 「?」 「彼一時不妊治療してたでしょ…その時酔っ払った園田と試しに寝たのよ」 「!!」 「愛してる女に子供を授けられないかも知れないって、大の男がわんわん哭くから。フフッ」 母は、その時を思い出した様に可笑しそうに笑う。だが話してる内容は誰も笑えない。 「だから私が作ってあげたの、貴女達の子を」 それは俺が、母を嫌いになった瞬間だった。
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