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「ついでに、この部屋も見せてあげる」
彼は私の肩を押し、本棚横のドアを開けた。
灰色の壁に囲まれた中に、パイプベッド1台と等身鏡しかない。開口部はドアだけ。
異質な空間だ。
彼に後ろから掴まれてる両肩がゾワゾワする。
「防音設備バッチリだから、良く眠れるの」
耳元に落とし込まれた台詞に、不意に目眩がした。
引き戸になってるドアに手をかけたまま、私は思わず床に膝をついた。
「だ、大丈夫?」
津久井の心配する声に、私は額に手を置き振り返った。
見上げる私、見下ろす彼。
津久井が掠れた声で
「ねえ…それ、誘ってる?」
そしてガラリと違う声音と表情で
「折角、今夜は良い人でいようと思ったのにな~」
私の肘を取り、ベッドの上に放った。
武骨なパイプの外枠に、寝心地の良いマットレス。
彼の後を目線で追っていると、部屋の内側の電子錠パネルを操作した。
すると引き戸が音もなくピタリと閉まった。
同時に窓もない部屋に間接照明が仄かに点った。
これから、どうなるかなんて分かってる。
大人だから。
「さ、誘ってなんかいないですよ!立ち眩みがしただけです!」
男の独り暮らしの家に上がった私が悪いが、一応、反論・抵抗してみる。
「へ~そうなんだ。でも俺、佐竹ちゃんのイキ顔も見たくなっちゃった」
私は体を起こし
「それ、見る必要ありますか?」
酔いはとっくに醒めていた。
「うん。必要、見たい」
のし掛かる様に津久井が口付ける。
痛い!
彼の顎髭がチクチクして痛い。
「やめて!」
その一言が火を点けた様だ。
津久井の唇や手が、私の体の上を乱暴に動き回った。
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