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身に覚えのない中傷に痛む心はない。
社会人になってから大分経つ。
大金が動く車の取引に様々な人間の側面を見てきた。
私が津久井を嫌だと思うのは、その目つき。
仕草が性的なものでなくても、時折感じる全身を這う津久井の視線が堪らない。
私という人間を、女としての状態を見定めている感じ。
周りに誰もいない2人だけの時に投げかけられるソレに、虫酸が走る。
だが、嫌な客でも羽振りの良いお得意様を無下にする事は出来ない。
それは私が、伯母の命を支えているからだ。
幼少期両親を交通事故で亡くし、私は母の姉、静子伯母さんに育てられた。
他の親族は遠方だったり介護施設に入所してたりして、幼い私の面倒をみれるのは伯母だけだった。
伯母夫婦には子どもが居なかった。
婚期が遅かったのに加え夫は単身赴任、静子伯母さんは幼保育園の園長を任され、生活がスレ違ってた。
両親の事故の日、私が助かったのは伯母の園に登園してたからだ。両親は私を預けた後、2人仲良く出勤途中だった。
伯母は養子縁組を提案した。
だが、旧家の次男坊だった伯父は反対した。
2人の実子が出来る可能性があるうちは、私を戸籍に入れるのを躊躇った。かといって積極的に子作りする訳でもない伯父。
プライドが高く何かあると伯母を責め、自分の非を認めない伯父。
そんな夫に伯母は女神の様に接した。何事もアルカイック・スマイルでやり過ごし、声を荒げる事のない慈愛の塊。
伯母は穏やかな優しい女性だった。
結局、伯母が法定後見人になり私は一緒に暮らし始めた。
伯父が赴任先から週末帰ってくるのは疎らで、私が就学しても2人だけの生活が多かった。伯母が勤めてる園に遊びに行けば、子ども達の賑やかな声がして寂しくなかった。
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