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(あそこだな……)
シュミット家の屋敷はすぐにわかった。
トルスの町では見たこともないような立派なお屋敷だ。
俺は、屋敷の手前の木陰に身を潜め、様子をうかがった。
きっと、今、ここにミシェルがいるんだ。
そう思うと、すぐにでも会いに行きたいけれど、行ったところできっと門前払いをされるのがおちだ。
シュミットさんは、俺のことを嫌っているから…
では、どうすれば良い?
ずっと、ここで待つしかないのか?
確かに、待っていればいつかミシェルは出て来るだろう。
診療所に行くだろうから。
でも、きっと馬車だ。
そしたら、ミシェルを見ることも出来ない。
だとしたら、診療所に行く方が良いか。
そうだ…ルイスのいる診療所で働かせてもらったらどうだろう?
そしたら、ミシェルに会える。
それに、シュミットさんだって、まさか、仕事を辞めさせるような真似はさせないだろう。
いや、それはわからない。
辞めさせろというかもしれないし、俺がそこにいるとわかったら、もう一軒の診療所に移るかもしれない…
「そこで何をしている。」
考え事の最中、急に響いた声に、俺はびっくりして振り返った。
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