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「蘭!」
誰かが俺の名前を呼ぶ。誰だよ。
俺の至福の時間を邪魔すんなよ。
「んー、あともう少し……」
「……早く起きて」
「…………」
「らーん」
見えぬ聴こえぬを貫き通そうと、更に身体に布団を巻き付ける。もぞもぞと動く俺にその声の主はめげずに大きな声で呼びかける――……、
「らぁぁぁぁん!!」
――……うるせえ。
だぁあもう、返せよ俺の幸せ、この微睡みに身を浸す時間が一日の中で一番貴重だってのに、そして今日のこのぬくもり具合はここ最近で一番調子がいいってのに何で今日に限って邪魔すんだよ馬鹿野郎、
「…………俺様の尊い時間を邪魔すんじゃねぇ!!」
叫んでバサッと布団から跳ね起きた。刹那。
「――……っ」
「…………な、」
心臓が、止まるかと思った。否、多分一瞬絶対止まった。
睨みつける様に上体を起こした俺の顔の目の前に、小梅の顔が在って。
吐息すら、零せないその距離。
少しでも呼吸をしようものなら、唇が触れ合いそうな、その隙間。
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