紫蘭の花詞

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時間が、止まる。 朝陽に照らされた艶やかな金髪、すっと通った鼻筋、きゅっと閉じた蕾みたいな唇、滑らかに光る頬、薄く散ったそばかす、驚いた様に見開かれても、尚存在している二重幅――……、 小梅の全てが、愛おしくて、きゅう、と心臓から音がする。 長い睫毛に縁どられたその桜色の瞳は、何だか魔力でもあるみたいに、俺の鼓動をあっという間に加速させる。 寝起きのぼやけた頭では、身体の何処に理性がしまってあるかなんて、分からない。 どくん、と大きく心臓が鳴る。 欲望だけが、俺の身体を支配する。 小梅の唇、柔らかそー……、 小梅の唇を見てから、そう思うまでの時間、体感ゼロコンマ1秒。 やべ、俺、 どくん、なんて軽いもんじゃない。 どくどくどくどく、そんなに血液を送り出してたら俺の心臓、空になっちまうよ。
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