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「――……蘭?」
ただでさえぎりぎりの俺に、あろうことか小梅はその首をちょこんと傾げて俺を見つめる。
ああもう馬鹿なの?
ねぇ、小梅、お前は馬鹿なの?
俺今お前の事襲いそうになってるんだけどそれ分かってんの?
なんでそんなに可愛いんだ、最早呪いか?
俺の目は呪われてるのか?
黙ったまま脳裏上で、超高速で一人でツッコミ続ける俺に、小梅は何かを言おうとしてその桃色の唇に小さな隙間をつくる。
ちら、と可愛らしい前歯の先っぽが覗いて、
――……もう、ちょっと、無理。
お前の所為だからな、なんて言葉が浮かんだけれど、へっぽこで意気地なしの俺の唇からそんな気障な台詞が出て来る訳もなく、先に腕が伸びた。
小梅に触れるまで、あと、残り0.05秒。
心臓がカウントダウンをするみたいに震える。
0.04、0.03、0.02、0.01……、
俺の腕が、小梅の顎を掬い上げようとした、刹那。
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