紫蘭の花詞

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気が付いたのは、ある春の日だった。 俺は、幼馴染の向日葵(ひまわり)と、妹の彩夢(あやめ)を誘って、もうひとりの幼馴染の家に遊びに来ていた。 彼女の両親に挨拶をしてから居場所を聞けば、「庭で草むしり中よ」と彼女のお母さんが教えてくれた。 3人そろって庭へ向かえば、確かに彼女はその腰を屈めて草むしりに勤しんでいた。ぽかぽかとした陽気が、額に汗を滲ませて、彼女はぐっとその汗を着物の袖で拭っていた。 俺は、彼女の名を呼んだ。 「小梅(こうめ)!」 太陽に透けた金髪が、ふわりと揺れた。 「あ、(らん)! 向日葵と彩夢も!」 振り向いた彼女に、どくり、と心臓が震えた。またか、と思った。 最近、小梅の瞳に映る自分を意識すると、心臓がおかしくなる。一瞬だけ、大きく音が鳴る。そして、無性に、触れたくなる。 「やっほー、遊びに来たよ」 そう言った向日葵の言葉に、ハッとして息を飲みこむ。 「小梅手伝ってんの? 珍しー」 「いつも手伝ってますー」 いつも通りに憎まれ口を叩けば、小梅はあっかんべー、と舌を出して来た。
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