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同じ様に舌を出そうとすれば、小梅の袖を彩夢が引っ張って、きらきらした瞳で話しかける。
「ね、小梅のお兄ちゃん、鬼になるんでしょ?」
“鬼”――……それは、ここ「鬼ヶ島」の国防を司る仕事。この鬼ヶ島で“鬼”という仕事に就くことが出来るのは、信じられない程、合格するのが難しい試験を潜り抜けた15歳以上の男だけ。
試験の内容は、絶対に話してはいけないとされていて、実際に受けに行かなければそれは分からない。秘密に包まれたその職業は、男の鬼子なら、一度は絶対に憧れるもので。現に俺も向日葵も、絶対に鬼になるんだ、と思っていた。
「俺、サイン貰いたい~」
そう言ってきゃっきゃっと笑い合っている彩夢と向日葵に、小梅が溜息を吐きながら言う。
「あんたたち、私じゃなくて、お兄に会いたかったんでしょ」
「俺が、どした?」
小梅の言葉に、ハッとして振り返れば、庭に面した廊下に、小梅の兄――菫さんがひょっこりと顔をのぞかせていた。
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