紫蘭の花詞

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小梅の兄は、16歳で鬼の試験に合格した。小梅と誕生日が同じだから、あと数日で17歳になるけれど、大人でもなかなか合格できない中、それは素晴らしい事で、ここ最近の近所の話題はそればかりだった。 「俺、菫さん尊敬します。17歳で鬼になるなんて、凄いです」 俺と向日葵は13歳。俺の誕生日は7月で、向日葵の誕生日は8月だから、今年の夏に、14歳になる。 正直にそう言えば、菫さんは小梅そっくりの淡い琥珀色の瞳を弛めてくしゃっと笑う。その笑い方が、小梅によく似ていて、何故だか変な気持ちになる。 「ありがとう、蘭」 「俺も、鬼になれるように頑張ります」 「俺も!」 そう答えた俺達に、菫さんはまた大きく笑って、俺達の頭を撫でる。 「うん、待ってるよ、蘭、向日葵。二人なら、絶対に入ってこれるよ」 その言葉に、自然と口元が弧を描く。嬉しくて向日葵と笑い合っている俺に、低い声が届く。 「余所行き笑顔」
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