6人が本棚に入れています
本棚に追加
まさか、あんなことになるだなんて、誰が予想できただろう。
俺が小梅への想いを自覚した、その数日後。
小梅は、家族を全員失った。
父親も母親も、そして、兄である菫さんも――……殺されたのだ。
「蘭、小梅ちゃんの様子見てあげて」
俺の母親に連れられて、小梅がうちに引き取られてきた。
伽藍洞の様に何も言わず、泣くこともせず、ただひたすらに、何かを睨みつける様に虚空を見つめていた。
小梅は、凄惨な事件現場にただ独り、血塗れになって座っていたらしい。家族が殺される場面を、見てしまったのかも、しれない。
もしそうなのだとしたら、こうなるのも当たり前だと思った。
まだ餓鬼だった俺は、小梅が何処か遠くへ行ってしまった様なそんな気持ちになって、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「小梅」
名を、呼んだ。けれど、小梅はまったく反応しなかった。
最初のコメントを投稿しよう!