22人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
実際のところ、1組の教室内で今最もテンションが高かったのは、八王子だった。
彼以外のことごとくが、失望と、少しばかりのいら立ちを持て余している。
ほんの数分前の、期待と歓喜に満ちあふれていた雰囲気は、今となっては思い出すことさえ困難だ。
限りなく無反応に近い生徒一同を見渡し、練馬は痰が絡んだような声でうながす。
「自己紹介してね。名前と……うーん、将来の夢?」
「相模大輔。
将来の夢、スタントマン」
ハンパではないアウェイ感の中でさらに大スベりしたのは、本人の夢が悪いのか、話を振った練馬のせいなのか。
いたたまれない空気はさらに加速する。
こんなにアレな空気のまま2学期が始まってしまうのかと誰もが不安になったとき、生徒の1人が勇気ある行動に出た。
「……声低いね」
最前列アリーナ席の女子、千葉さつきだ。
ちなみに、柏とはまんざらでもない仲である。
最初のコメントを投稿しよう!