ゾンビがやって来た日、悪魔は天使に恋をした

13/37
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
 実際のところ、1組の教室内で今最もテンションが高かったのは、八王子だった。  彼以外のことごとくが、失望と、少しばかりのいら立ちを持て余している。  ほんの数分前の、期待と歓喜に満ちあふれていた雰囲気は、今となっては思い出すことさえ困難だ。  限りなく無反応に近い生徒一同を見渡し、練馬は痰が絡んだような声でうながす。 「自己紹介してね。名前と……うーん、将来の夢?」 「相模大輔(さがみだいすけ)。  将来の夢、スタントマン」  ハンパではないアウェイ感の中でさらに大スベりしたのは、本人の夢が悪いのか、話を振った練馬のせいなのか。  いたたまれない空気はさらに加速する。  こんなにアレな空気のまま2学期が始まってしまうのかと誰もが不安になったとき、生徒の1人が勇気ある行動に出た。 「……声低いね」  最前列アリーナ席の女子、千葉(ちば)さつきだ。  ちなみに、柏とはまんざらでもない仲である。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!