ビターとブラッドチョコレート

10/13
前へ
/13ページ
次へ
 「そっか。ちゃんと治療してるなら大丈夫だよね」  ほら。  「なので、出来るだけ黙っていてくれると嬉しいです。人に変に気遣いされるの申し訳ないじゃないですか」  これは流石に本当その2。  自分で治療しないことを決めたのだから、そんな風に心配されるのはこっちも心が痛む。  「分かった。でも、いざとなったら救急車に叩き込んでやるからな。その時はちゃんと旦那さんに連絡入れるから観念しろよ?」  「あははは、先輩、その言い方じゃまるで……ま、るで……」  ふざけた声で発せられる先輩の声に背筋が凍った。だって、その言い方はまるで……  「お前、病気だよ」  口の中が異常に乾いていた。きっと歯茎から血が出ているだけだ。ほら、血って乾いたらポロポロと塗料みたいに落ちていくじゃん。血糊とかもそうじゃない。ほら。ほら。  そう思ってないと膝から崩れ落ちてしまいそうだった。自分すら騙していないと叫び出してしまいそうだった。  「やだなぁ、ちゃんと治療してますよ、。心配しないでください」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加