ビターとブラッドチョコレート

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 そのまま、逃げるように立ち去ろうとした同僚を捕まえて、部長を呼んできてほしいこと、部長と二人きりで話すために会議室を押さえてほしいこと、そしてこのことは部長以外誰にも他言しないでほしいとお願いすると、彼女はぎこちなくも頷いてくれた。  速やかにセッティングは行われ、10分もしないうちに洗面所に再び彼女がやってくる。  「部長、会議室Bで待ってる。……あとこれ、マスク。さっきみたいに急に鼻血出たら驚かれちゃうと思うから」  そう言って、グレーのマスクを渡して、すぐに彼女は去っていった。  接点があるようでなかった彼女がこんな気遣いができるだなんて、今まで全く知らなかった。  マスクをつけて、会議室の扉を開けると、パンツスーツの似合う大学の先輩が待っていた。
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