Episode-11 困った来客

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Episode-11 困った来客

「ええ?海竜を討伐できるだと?」 船の手入れをしている船員たちにアズライトらが話した。 「まあ...できるんなら願ったり叶ったりだがな。...出来るのか?」 アズライトが頷いた。 「...ハッハッハ、物は試しだな。よし、船長に交渉してみる」 船員は船に戻り、暫くすると戻ってきた。 「今日にも出港だ。準備は済ませておけよ」 船員がアズライトらに話すと、船にそそくさと戻っていった。 船員が良い人でよかったと、心底ほっとした。 ただし、失敗すれば... 「要するに海竜を倒せば...ってことだろ?」 「確率は大いにあると思う...ただ、船の上での戦いにどうしてもなるから、僕らは圧倒的に不利だ。そこだけ注意しよう」 ふらふぃーが出発前、全員に告げた。 カガミンは港町で槍を新調し、エタルナはアズライトと共に剣技の鍛錬。 そしてふらふぃーは海竜についての書物を、姉貴は短剣を研いでいた。 出港の時... 「海竜はアドネ海域の特に深いところになりをひそめてやがる。何時来るか分からんからな...しっかり戦闘準備はしておけよ」 船員が展望台から下のアズライトらへ向かって叫んだ。 船長は船の先端から大海原を見つめる。 「海竜は強敵だ。砲撃も何もかも受け流す。それでも、お前らは倒すことが出来るのか?」 アズライトらに船長が問いた。 「...やってみせます」 アズライトが真剣な顔で答えた。 「よもぎは?」 ふと、カガミンが言った。 「あれ?」 「そういや...」 他の皆もよもぎが居ないことに気付かなかったらしい。 「あ...そういえば、よもぎさんなんか酒場に行くとかで...」 「「「あ」」」 主戦力が海竜そっちのけで酒場へ行ってしまった。 最悪だ、マイナススタートか... エタルナは呆れたように頭を抱えた。 「まあ、よもぎは結構マイペースなところあるからな...」 カガミンが苦笑した。 「そんな問題じゃないでしょ...」 姉貴が肩をがっくりと落とした。 数十分船を走らせると、渦を巻く海域が見えた。 刹那、渦の中から大きな尾が姿を現す。 「来やがった...海竜だ!装填用意!」 船長が大きな声で叫ぶ。 ふらふぃーはマストに登り、弓を構えた。 他のエタルナ、カガミン、アズライト、姉貴はそれぞれの武器を構える。 しかし船上での戦いだ、物理攻撃は圧倒的に不利な状況になる。 そして数秒後、海竜の頭から首が姿を現した。 「ァァァァアアアアアアッッッ!!!」 大きな咆哮を上げると船に向かって炎の吐息を放った。 姉貴は持ち前の俊敏さで船から船へ、そして海竜の背中へ飛び移る。 それに気が向いたスキに、エタルナの炎の球体が海竜に命中。 しかし、海竜は全く無傷のようだった。 「...炎は効かないのか!?」 動揺していると、海竜の尻尾の攻撃が船を破壊する。 ふらふぃーの弓攻撃も海竜にはほぼノーダメージのようだった。 「ウイングスター!」 無数の風の魔球が海竜を襲う。 「オオオオオオオオオオオオオ!!」 海竜が雄叫びを上げると、波を呼び寄せた。 「シールクラウド!」 しかし、カガミンの風の防御がその攻撃から船を守った。 船員らは海竜に砲撃を続ける。 姉貴も海竜に攻撃の機会を伺うが、全くスキがない。 アズライトの雷の剣が、僅かながら海竜に命中する。 更に連続してエタルナの飛び上がっての攻撃が炸裂。 これにはさしもの海竜も大ダメージのようだ。 「よし...雷属性はやはりダメージが通る!...アズライト、今はお前がこの中で一番ダメージを叩き出せる男だ...頼むぞ」 エタルナはアズライトに向かっていった。 アズライトは首を縦にふる。 「アナライズッ!」 海竜の動きが一瞬止まった。 姉貴の短刀が海竜の左目を潰す。 更にアズライトの雷の剣が背中に突き刺さる。 その背中を伝い、全身に雷が感電していく。 (いける...!このまま...!) アズライトは更に電力を強くしていく。 その時... 「避けろぉおおおおぉおおおおおおっ!!!」 アズライトの脳内に響き渡る轟音。 刹那、体が空中に浮いた。 鈍い音と共に、全身から血が流れていく。 船のマストまで吹き飛ばされ、甲板まで叩き落された。 海竜の尻尾がアズライトを吹き飛ばしたようだ。 頭を強打し、暫く脳が現実と乖離していた。 ぼーっとし、視界がくらみ、歪んだ。 なにか叫んでいた気もするが、次の瞬間全てが途切れた。 ―――――――――――――――――――――――――― 「カガミン...!?かばったのか!?」 カガミンが風魔法で身を挺して船ごと守った。 見ると、ふんばる足先に大量の血が流れてきている。 「ぐっ...」 吐血する。ふらふぃーがカガミンに近付く。 「気にするなッ!!!」 カガミンが叫んだ。 全員の動きが止まった。 「海竜に集中しろ...!それに...」 「防御(まもり)は私の得意分野だ...!!」 その声とともに、船員らは砲撃を、ふらふぃーは気絶して動けないアズライトの剣を取り、海竜に向かっていく。 「もう炎が効かねえとか言ってる場合じゃねえな...」 エタルナは不敵に笑うと、大地に足をめり込ませる。 「限界突破(エクシード)ッッッッ!!!!!!!!!」 それと同時に、エタルナの周囲を大きく炎が囲む。 エタルナは甲板を蹴り上げ、海竜の喉元に食らいついた。 「面倒な来客だ、饗してやる」 「夜行連撃!」 電光石火のごとく、海竜の体を二度、斬りつけた。 更にふらふぃーの投げつけた剣が首元へ突き刺さる。 その先から剣に向かって弓を放ち、衝撃で奥へと突き刺した。 姉貴の俊敏性に翻弄される海竜。 微弱な攻撃力ながら、それが積み重なれば大ダメージともなる。 その瞬間、海竜が口から光線を放った。 船に直撃し、マストは半分以上が吹き飛んだ。 甲板も木っ端微塵に打ち砕け、沈没寸前とまで迫る。 もとより傷が深かったカガミンは、立ち上がれなくなるほどのダメージを受け、更に海竜と至近距離に居た姉貴とふらふぃーは海に放り出される。 エクシードを開放していたエタルナは無傷だったが、開放時間がすぎればいずれ傷がもとに戻る。 「ぅ...」 アズライトが衝撃で意識が復活し、立ち上がる。 しかし到底まともに戦えるような状況ではなかった。 砲台も全て破壊され、船員たちの多くが海に投げ出された。 「ライジングボルト!」 アズライトが最後の力を振り絞り、暗雲を呼び寄せる。 刹那、雲が光り、一筋の光が海竜を貫いた。 「!アズライト!よくやった!」 エタルナは海竜が怯んだ一瞬のスキを逃さなかった。 「降竜破!」 エタルナは天高く舞い上がり、剣を大地に振りかざす。 落下の衝撃から生み出されるエネルギーで、剣の威力が最高潮に達した。 エタルナの剣は海竜の脳天を突き破った。 ―――――――――――――――――――――――――― 「ふらふぃー、捕まれ」 エタルナがふらふぃーを引き上げた。 姉貴は既に船へ上がっており、他の船員の多くが無事だった。 港町へなんとか帰還すると、他の船員らが出迎えた。 「何っ!?討伐できただと!?本当か!?」 船長が全船員を集め海竜の討伐完了を宣言した。 船員らは大いに湧き上がり、アズライトらを英雄視した。 カガミンとアズライトは、港町の医療施設で治療を受けた。 ふらふぃー、エタルナ、姉貴は海竜の落とした水の宝玉を持ち帰る。 これにて、「火の宝玉」「水の宝玉」「氷の宝玉」が集まった。 残るは、「風」「雷」「闇」「光」の4つだ・・・。 一方、よもぎは... 「ストレートフラッシュ!また勝ちだぁぁぁぁあああ!」 「なにぃいいいっ!?もう一回だあああああ!」 港町のならず者と、ポーカーを嗜んでいた。 どうやらアズライトらが海竜討伐へ向かい、帰ってくるまでずっとやっていたらしい...。 その後、ふらふぃーが無言でよもぎを連れ戻した。 「...ああ、そうだ!」 カガミンが不意に思い出したように立ち上がった。 「ルノギストだ!あそこに宝玉がある!」 隣のベッドで寝ていたアズライトが目を醒ました。 「ええ...?」 「...先祖が残していった、宝とかいって...何か分からなかったんだが、今わかった。...あれは風の宝玉だ!...通りでうちの家系が風属性の使い手が多かったわけだ...」 カガミンの脳内で全ての辻褄が合ったようだ。 ―数日後― 数日後、一行はルノギストへ向かって進んだ。 かつての王都は、廃墟と化している。 「KMさんの話では、"雷を呼ぶ山に宝玉を埋めたり"と記されていた。それは多分、雷鳴の山のことだろう...。それもついでに探そうか」 ふらふぃー、エタルナ、アズライトの3人が雷鳴の山へ カガミン、よもぎ、姉貴の3人はルノギストへ向かった。 ―雷鳴の山― 「久々だな...そういや、アズライトが雷を開放した場所でもあったか...」 「前は任務をするためだけに来てたから気付かなかったけど、もしかしたら探せば宝玉があるかもしれないね。探すぞっ!」 ふらふぃーが勢いよく探しに行った。 驚くほど山には魔物がおらず、特に脅かされることもなく宝玉探しに時間を充てることが出来た。もともと手入れの効いていなかった山道は、更に荒れており、進むことは困難だったが、それでも時間をかけてじっくり探した。 数時間後... 「ん...?」 アズライトが壁を触ると、音があたりに響いた。 「...」 アズライトが壁をけると、音が響き渡る。 (ここ...まさか?) アズライトが雷を放ち、壁を崩壊させた。 ふらふぃーとエタルナがアズライトの元に来る。 「これ...」 見ると、先へ続く道が見えた。 「壁が薄かったみたいだ。この先に行ってみよう...」 数分歩くと、松明4つの灯り元に、宝玉があった。 「雷の宝玉...これが...」 宝玉を手に取ると、謎の感覚に襲われた。 その宝玉は、静かに雷を宝玉の中で放ち続けていた。 ―廃都ルノギスト― 「これが、ルノギスト...なのか?」 カガミンとよもぎ、姉貴が絶句した。 あれだけ活気のあった街は、人影を見るものもなくなった。 既に原型をもはや留めていない城に入り、地下へ進む。 硬い鉄格子はよもぎが吹き飛ばし、奥へ進んでいった。 宝玉はほこりを被っていたが、カガミンが手にとった瞬間、ほこりは全て吹き払われた。 ...風の宝玉だ。 更にルノギストの街中を見て回ると、よもぎが... 「...ん?ここ...」 教会の目の前で立ち止まった。 「どうした?よもぎ」 「不思議な感覚がする...入ってみる」 よもぎは教会に入っていった。 中は不思議と安心感に包まれていた。 その中で、教会の地下へ続く階段を発見した。 教会の地下へ入ると、そこには女神の像があった。 その女神の像がかかげる手のひらの上に、光を放つ宝玉。 それを姉貴が手に取る。 なんと、ルノギスト国内に2つの宝玉が隠されていたのだ。 その後、アズライトらと再開すると、6つの宝玉を取り出した。 「火、水、風、雷、氷、光、もう最後の宝玉の場所にも検討がついてるんだ、すぐにいこう」 宝玉探索から僅か2週間あまり。 6つの宝玉の回収に成功した。 そして... ―ラゾの空洞― 「あれだ、宝玉は!」 ふらふぃーが指差し、走り出す。 その宝玉を見つめる、一人の大柄な男がいた。 「誰だ?」 エタルナが目を凝らす。 直後、カガミンとよもぎが 「アフターか!?」 と叫んだ。 アフター、確かルノギストの兵士長で、襲撃時にはルノギストに残って戦い続け、その後失踪したと聞いていたが... まさかこんなところにいるなんて... カガミンが満面の笑みがアフターに近付く。 「やあ!まさか生きていたなんて、本当に良かった!今まで何してたのかい?私は聞きたいな、君の旅の話を!」 直後、カガミンが吹き飛んだ。
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