Episode-13 拒絶の牢獄

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Episode-13 拒絶の牢獄

デナイアの牢獄― 両腕が鎖で繋がれていた。 鉄格子と石レンガで囲まれた部屋は、酷く衛生環境が悪い。 ...他の皆はどこへ... カガミンはアフターに喰われ、よもぎは消し去られた。 七星玉も全て奪われ、エタルナの限界突破も奪われた。 1からじゃない、0からのスタートになってしまった。 最も、スタートできるかはわからない状況だが... 数分もしていると、歩いてくる音が聴こえた。 どうやら魔物の警備兵のようだ... 両腕に繋がれた鎖を剥がすと、「外へでろ」とだけ言われた。 武器すらもないこの状況で戦おうとは思わなかった。 それに...何故か魔法が放て無いのだから。 外へ出ると、そこには多くの人間がいた。 そのいずれもが重労働を強いられている。 ぼーっとしていると、後ろから警備兵に蹴られた。 「早く仕事につけ!」 そうとだけ言われると、アズライトはすぐさま仕事場に向かった。 「おい」 向かってる途中、誰かに呼び止められ、後ろを向いた。 「あんた、新人か?」 その男は、アズライトに向かって歩いてきた。 この男も警備兵か... 「俺はチーカマ。この牢獄に早2年いる男さ。今は労働者の監視役をやっている...。まあ安心しろ、少なくとも俺は敵側(あっちがわ)の人間じゃない。...色々教えてやるから、着いてきな」 チーカマはアズライトを連れて仕事場を周った。 どこもかしこも酷い有様だったが、中でも酷かったのは... 「...ウッ...ウッ...おいヘリウム...なんで死んじまったんだよ...」 どうやら仲間の遺体を埋める場所らしい。 その様子を黙って眺めることしか出来なかった。 「...ここは毒だ。早く行こう」 チーカマに連れられるがまま、次の場所へと向かった。 その後、アズライトはクタクタになるまで働いた。 ただ、エタルナや姉貴、ふらふぃーを見つけることは出来なかった。 その日の夜... 「お...ラ...!」 「おい、アズライト...!」 と、微かに声が響き渡った。 隣の部屋からだ...確か...チーカマの部屋だったか。 「...生きてるか?...ここは壁が薄いからな...声がギリギリ通る。今日見たら分かったと思うが、ここはこんなところだ。...俺はもうここを出ようと思ってる、お前にも協力して欲しい」 その日はチーカマと数分間話した後、眠りについた。 次の日も労働が始まった、そして... 「うわあああ!やめてくれえええ!」 そんな悲痛な声が響き渡った。 労働者の手が止まる、中心部に置かれている処刑場に目が向いた。 「お前は俺に反逆した!問答無用で死刑だ!」 「お願いします!殺さないで!嫌だ!」 「うるせぇ!死ね!」 その時、隣にいたチーカマが 「もう我慢できねぇ...!」 そう言って処刑台まで走り出していった。 チーカマは警備兵を思いっきり殴ると、労働者に向かって声を上げた。 「今こそ反逆の時!この腐った牢獄を潰せ!!!!!!!」 どうやらこのチャンスを伺っていたのか、労働者は我先にと警備兵に突っかかっていった。 チーカマは警備兵を殴り倒した後、アズライトに 「あの塔を見ろ」 と牢獄の隣につながっていた塔を指差した。 「あそこにこの牢獄のすべてがある。魔力を封じている結界も、親玉も、そしてきっと...お前の仲間もいるだろう」 アズライトは頷き、チーカマと握手を交わし 「ご武運を。」 と言い、塔まで走り出していった。 塔の門兵は幸い、今まで相手にしてきた者に比べれば弱かった。 魔法や剣がなくとも倒すことは容易にできる。 塔に入ってすぐ、転がっていた剣を手に取り上へ上へと向かう。 道中、デビルアーマーなど、鎧に身を包んだ敵が多かったが、剣の攻撃力が意外とあったため、なんとか倒し続けることができた。 外を見ると、労働者達が警備兵たちと戦っている。 彼の中にも属性持ちがいるはず...まずは結界を壊さないと。 まずは塔の最上部にあるという、魔封じの結界を壊しに向かった。 「!騒がしいと思えば侵入者か...!俺に見つかって生きて帰れると思うなよ!」 二体の警備兵は大きな剣を構えた。 アズライトは片手剣の扱いに慣れているため、両手剣ののろまな攻撃は簡単に避けることが出来るし、何よりカウンターが入れやすかった。 敵を掃討してから、塔の最上部へ行く。 強風が吹き荒れていた。立つことも困難だった。 そんな中、1mmのズレもなくその場に立ち尽くしていた球体。 様々な色の光線を放ち続け、なんともいえない雰囲気を纏っている。 これを壊せば、この牢獄を囲う結界が全て解ける。 アズライトは球体に攻撃するも、その魔力を前に近付けない。 何度も、何度斬りつけても割れる気配すら見えなかった。 「なんだこれ...!?」 魔力に吹き飛ばされそうなところを、なんとか踏ん張る。 そのまま、少しずつ足を前へ前へと運んでいく。 魔力に飲まれていきそうだ...吹き飛ばされてもおかしくない。 ...いや、吹き飛ばされてたまるか... (...アフター、あの男を絶対に...殺すまでは...!!) アズライトの使命と魔力が共鳴した。 刹那、空を囲う暗雲から巨大な一筋の雷が落ちた。 巨大な爆音とともに、魔力の球体は木っ端微塵に壊れた。 牢獄を囲う不穏な雰囲気は一瞬にして消え去った。 アズライトの全身に雷の感覚が戻ってくる。 「手始めに...」 アズライトを手を掲げる。 天高く掲げた手に、一筋の雷が落ちる。 そのエネルギーを、牢獄に向けて放った。 警備兵達は痺れ、爆散し、消え去った。 労働者たちには命中しない、これも全て雷属性を完全に操っているアズライトだからこそできた芸当であろう...。 「...」 強風が照りつける中、反対側の塔を目にする。 塔へと続く一本道を渡っていく。 その中、チーカマが追ってきた。 「アズライト!やったな!」 「チーカマさん!」 二人は再会にしばしの喜びをした後、塔へと突入した。 チーカマは斧を構え、アズライトは片手剣を軽く持っていた。 扉を雷で吹き飛ばし、出迎えてくれた魔物を秒で倒す。 塔の中には驚くほど魔物が居た。 刹那、巨大な波が魔物を襲った。 アズライトがふとチーカマを見ると、チーカマがやったようだ。 「俺は水属性が使える。雷とは...ちと相性が悪いかな」 チーカマがニヤリとすると、アズライトも笑ってうなずく。 水に雷が伝わり、水に飲まれた魔物に電気が感電していく。 そして痺れている間に、二人は塔を先へ先へと進んでいく。 チーカマの超重量攻撃と、水属性のコンボに、雷属性の感電が加わり、片手剣の身軽さで敵を軽く翻弄していく。 真逆の二人が共闘すれば、この群れなんぞ簡単に振り払われるのか。 「ゥオオオ!!」 「トロールだ。少々面倒だが...」 トロールが大きく棍棒を振り上げた。 チーカマは斧でそれを受け止め、弾き返す。 アズライトが壁を蹴り上げて、その反動で腕を切断する。 まるで、かつてのエタルナを再現したかのように。 そのスキを狙い、チーカマの斧が両足を切り裂いた。 最後の一撃は、アズライトの閃光がトロールを貫いた。 塔の最上段へ登ると、そこには3つの椅子があった。 「よう、アンズ、外は絶賛パーティ中のようだが」 椅子がこちら側を向くかと思うと、人間がいた。 「にん...げん?」 「取り巻きのテルツキとシロオ。ま、この牢獄を統治するヤローだ。こいつらさえ倒せれば...仲間も取り戻せる」 (人間が...なぜ?) 疑惑の念を抱いたまま、アズライトは剣を構えた。 アンズ、テルツキ、シロオ。 アンズはレイピアを、テルツキは鋭い爪を、シロオは本を持っていた。 「...面倒だな」 アズライトが苦し紛れにそういった。 (ふらふぃーさん、どうやら...とんでもないことになったようです。助けるのはちょっと後。やることがあるから...) アズライトが心のなかでふらふぃーに向けてメッセージを送る。 深く腰を構え、剣を抜き取った。 「反逆者め、肉塊の一つも残さず殺してやる」 アンズがレイピアを構えた。 「疾風、迅雷。」 刹那、華麗なる紫電ととともに、アンズの右肩から血が吹き出た。 更に伝染するように、シロオ、テルツキのそれぞれ左肩、横腹が斬れた。 「爆散しろ、雷ッ!」 更に傷口から雷が発生し、3人を吹き飛ばす。 「ようやった!バイラルカーテン!」 チーカマが巨大な波を呼び寄せる。 怒涛の攻撃が、早くも3人を窮地に追い込んだか...。 しかし、トドメどころか瀕死の状態にも持っていけなかった。 「強いねッ!」 アンズの波動弾が、アズライトを吹き飛ばす。 「魔導書、全ての魔力を司れ...ラーヴァガッシュ!」 チーカマの足元に溶岩が生まれた。 「うおっ!うおっ!ウォータースプラッシュ!」 なんとか火で消化したが、テルツキの爪攻撃が炸裂した。 どれだけ個々の戦力が勝っていようと、2vs3。 圧倒的に不利という状況は揺るがぬまま、相手有利で進んでいった。 徐々に徐々に防戦一方となっていく。 「ラストメイル...!」 シロオの魔法により、アズライトとチーカマに異変が。 遂には、アズライトとチーカマの防御が崩れていった。 もはや、一撃が大ダメージへと変わるのか。 ―地下牢獄― 「外がやけに騒がしいな...何事だ?」 エタルナは牢獄の鉄格子を掴み、外の様子を伺う。 反対側には姉貴が、その隣にはふらふぃーがいた。 「...ただごとじゃなさそう...」 姉貴が不安げに外の様子を伺った。 この狭い狭い牢獄に捕らえられ早3日。 地上の景色は見ることが出来ず、地下でただただひたすらに働いた。 「ん...」 ふと、エタルナの手元に炎が生み出された。 「魔法が使える...!」 エタルナは鉄格子を炎で焼き尽くした。 「!エタルナさん...魔法が?」 姉貴が輝くような目でエタルナを見た。 「ああ、どうやら...本当に何かが起こったみたいだ」 エタルナはふらふぃーと姉貴を牢獄から出すと、武器庫へ向かい、剣、短剣、弓を調達し、塔へと向かった。 「どうやら反乱が起こったみたいだ...」 外で話を聞いていたふらふぃーが追いついて話した。 「...そうか」 塔の上を見上げると、交戦しているのがひと目で分かった。 「アズライトだ...」 ふらふぃーが不意に話した。 「あそこにアズライトがいるの?」 姉貴が問うと、ふらふぃーが即答した。 「アズライトがいる!上で戦ってるんだ!」 そう言うと、塔の頂上へ向かっていった。 エタルナと姉貴もそれを直ぐに追う。 ―頂上― 「...くっ...」 アズライトとチーカマは状況に恵まれず、背水の陣を強いられていた。 「グランドクラック...」 シロオが魔導書から魔法を放つ。 足元から鋭利な岩肌が次々と突出してくる。 「バイラルウォーター!」 チーカマの水魔法がなんとかそれを防ぐも、限界だ。 刹那、テルツキの全身が吹き飛び、塔から落ちた。 「...!」 エタルナの魔法がテルツキを吹き飛ばしたらしい。 「強風で助かる。おかげで俺の魔法も常時熱風だ」 エタルナは何時になく凶悪な目つきで言った。 「またか...!」 アンズは歯ぎしりをしながいった。 シロオは魔導書を閉じ、ため息をつく。 「いつぶりかな?アズライト」
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