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Episode-16 抗う強い意志
「だけども...物理も魔法も通用せず、ああやって空中を飛び回る辺り...やっぱ黒野が言う通り倒すすべはないのかも...」
姉貴が悔しそうに言った。
「いいや、なんでもいいから試してみるんだ!」
ふらふぃーが出てくる。
「スロウウェブッ!」
蜘蛛の巣が幻影の鯨を捉えた。
「鈍足化の魔法は効くみたいだ...今のうちに!」
かなくんと姉貴は、ふらふぃーの風魔法に乗り、幻影の鯨へ何度も攻撃を仕掛けるが、ダメージは与えられてそうにない。
その時、幻影の鯨が蜘蛛の巣を振り払い、大きく薙ぎ払う。
姉貴とかなくんは吹き飛ばされる。
海に叩きつけられる。
「うっ...倒す術はやっぱないのか...」
かなくんが半ば諦めたように言った。
その時、アズライトとエタルナが魔法を放つ。
「スロウウェブが効くなら、状態異常系は効くはず...!」
「アナライズッ!」
電光が放たれ、幻影の鯨の動きが止まった。
「とりあえず動きは止めた...けど、これもただの時間稼ぎにしかならない...!どうにかしてあいつを倒す術を...!」
「フレアストライク...ッ!」
エタルナの巨大な炎の球体が鯨目掛けて飛んでいく。
しかしそれをもすり抜けてしまった。
「...どうすれば...」
幻影の鯨はこちらに振り向くと、大きく顎を開いた。
「ん?何やって......!!!避けろぉっ!」
大声でエタルナが叫んだ。
鯨の顎に大きな球体が出来ると、それが光線となって飛んできた。
浜辺は木っ端微塵に粉砕され、海も真っ二つに割れてしまった。
巨大な爆音とともに、島の半分が吹き飛んでいった。
「まずい...っ...」
エタルナと姉貴、かなくんは間一髪避けたが、まともに喰らったふらふぃーとアズライトは辛うじて息をしているような状態であった。
「!」
刹那、水の光線がエタルナを25m程吹き飛ばす。
幻影の鯨は更に大地に降り立ち、尻尾を激しく振り回した。
それによって飛んできた物が、姉貴とかなくんを襲う。
「...厄介ね...」
「くっそ...」
その時、幻影の鯨がかなくんに突進してきた。
火花が飛び、真空派が周りに出来上がっていた。
その巨体がかなくん目掛けて一直線で飛んでくる。
かなくんが両手を突き出し、幻影の鯨を受け止めた
「え」
姉貴が思わず声をあげた。
あの巨体を、素手で受け止めたのだ。
刹那、幻影の鯨が10mほど後退した。
かなくんからは神々しい光が放たれており、右手を突き出すと、更に幻影の鯨が10mほど突き飛んだ。
「土俵際の粘り...」
「抵抗、発動ッ!」
かなくんの足元に大きなクレーターが出来上がった。
不思議なオーラと共に、幻影の鯨が攻撃を仕掛ける。
水の光線を受け止め、それを跳ね返し鯨にダメージを与える。
「...これが僕の...力?」
かなくんはまだ半信半疑のように自分を見ていた。
かなくんは鯨の攻撃を受けつつも、全てを跳ね返していく。
しかし、それでもダメージが蓄積されていく。
その時、かなくんの傷が治ってきた。
「...やっとできたぁ」
姉貴が歓喜の声をあげた。
「光属性、ようやく目覚めてくれたね」
姉貴がほっと息を吐いた。
その時、エタルナとアズライト、ふらふぃーが復帰してきた。
「光属性...?」
「そう、冒険者時代は光属性使ってたんだけどね~...最近全然使ってなかったせいで眠っちゃってたみたい。」
姉貴は幻影の鯨へ向かって、光の砲弾を放った。
幻影の鯨を光が包み込むと、幻影の鯨がくっきりと浮き上がった。
「この魔法は所謂"幽霊"系統の魔物にも物理攻撃が効くようにするんだけど。まさか幻影の鯨にも通用するなんてね...今よ!」
「疾風迅雷!」
アズライトの連続攻撃が幻影の鯨を切り裂いていく。
更にふらふぃーの風と、エタルナの炎がまじり熱風になる。
幻影の鯨の怒涛の攻撃を受けつつも、微弱ながらも傷を与える。
その時、アズライトの鞄から転がった水の宝玉を、かなくんがとった。
水の宝玉はこれまでにない強い光を放ち、かなくんの全身を包み込む。
島を囲む海から、波が襲いかかってきた。
「かなくんっ!?まさか...!」
「!?僕え?あれ?」
幻影の鯨は、波を背にかなくんに尻尾を叩きつけた。
しかし、「抵抗」が発動し、尻尾が切断される。
その背後から、アズライトの疾風迅雷が襲いかかる。
鯨の背中から腹部まで剣が貫き、そこから放電を放ち、幻影の鯨を内部から甚振りつけていく。
「シャドウシュート!」
ふらふぃーの闇属性の力を持つ矢の一撃が鯨に突き刺さる。
かなくんの強い水属性の魔法が、鯨の傷に追い打ちをかける。
更に姉貴の俊敏性のある連続攻撃、エタルナの会心の一撃が決まり、幻影の鯨は遂に動かなくなった。
最後はアズライトが巨大な電撃を放ち、鯨は爆散した。
―――――――――――――――――――――――――
「つまり...かなくんの抵抗は、相手からの攻撃を半永久的に跳ね返し続けれる...てことかな。あとは水属性と光属性がパーティに加わったのは強力だ...」
ふらふぃーはメモに書き記していた。
本島から救援にやってきてくれた船に乗り、帰っている最中だった。
「あと、光属性には回復魔法もあるみたいだね。水属性は...」
「チーカマさんが使ってた。全体攻撃が多い感じだ」
アズライトが言った。
「そして...これだ」
アズライトが鞄から氷の宝玉を取り出した。
「まさかあの鯨が持っていたなんてなあ...」
島は鯨を倒した後、失われた時の全てが一瞬で戻った。
整備されていたはずの道の残骸は廃れ、家は全て跡形もなくなった。
本島へ戻ると、次の行き先を探した。
アフターオールトの仲間が世界に散らばっているこの現状で、かなくんが仲間に加わったのは間違いなく追い風だ。
しかし、手掛かりのない宝玉を捜すにはどうすれば...
水と氷の宝玉を手に入れた次は...どこか。
5人は悩みに悩み続けた結果、とりあえず世界を放浪することにした。
元々宝玉があった位置には、もう宝玉はなかったはずだ...
アズライトらは世界を散策した。
多くの集落が地図上から姿を消していたが、如何せん魔物の雰囲気はなさそうだった。アフターが姿を隠しているのか...?
しかし、生きているとわかれば、すぐさま魔物を派遣するはずだ。
それをしないとは...なにか狙いがあるのだろうか...?
しばらくして崖の下で休憩していると、大きな鳥が頭上を駆けた。
羽毛が空から舞い降りてきたかと思えば、下半身はライオンに見えた。
白く美しい羽は、大地に跡形を残し、去っていった。
その光景に、誰もが心を奪われた。
かと思えば、その鳥は大地へ降り立ち、あたりを見渡した。
一通り見渡した後、大きく雄叫びを上げる。
刹那、その口から火炎が放たれた。
「うおっ!」
かなくんが咄嗟に水魔法を放ち、延焼は防がれた。
しかし、鳥は突如としてこちらに敵対意識を向ける。
「まさか...グリフォンかっ!?」
エタルナが鳥の攻撃を避けるとそう言い放った。
「グ、グリフォン?」
ふらふぃーが不思議なものを聞くような声で聞いた。
「俺が昔旅してたときに耳にしたやつだ...下半身がライオン、上半身が鷲の奇っ怪な生き物がいるってな...まさか...」
確かにその鳥は下がライオン、上が鷲のような姿をしている。
「...!」
姉貴が何かに気付いたように顔を驚かせた。
「なにか...変なオーラを感じる...どこかで...」
姉貴はしばらく考えた後、はっと思いついた。
「アフターの気だ...そのグリフォンは操られてるっ!」
「アフター!?...やっぱ動いてやがったか!」
アズライトが剣を付きたてグリフォンに襲いかかる。
グリフォンは後ろ蹴りで反撃を試みるが、それを電撃で振り払われる。
「ぉっと...危ない...」
アズライトは間一髪のところで攻撃を避けた。
「爆散の矢ッ!」
ふらふぃーがグリフォンの足元へ矢を放つと、その矢が爆発を起こす。
しかし、グリフォンはけろっとしていた。
更に大地を踏みにじるが如くの波動を放ち、5人を攻撃する。
「抵抗発」
かなくんが抵抗を発動しようとした瞬間、グリフォンの爪攻撃がかなくんに命中し、かなくんが倒れ込む。
更に上空からかなくんを叩きつけた。
「痛っ...」
炎弾が連続してグリフォンに飛ぶが、全て避けられる。
ふらふぃーの矢の攻撃も効果がなく、風魔法は全て受け止められる。
姉貴の短剣も素早い攻撃に対応ができず効果が発揮できない。
「雷、墜ちろ」
刹那、空が暗雲で包まれ、雷がグリフォンを貫いた。
グリフォンは大地に叩きつけられた。
「やったか...」
グリフォンが動かなくなったところを見ると、すぐさま立ち去った。
その時、グリフォンの煉獄が5人を取り囲んだ。
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