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Episode-17 謎の少女
煉獄で囲まれたが、かなくんの水魔法で窮地を脱する。
次の瞬間、煙に紛れグリフォンが突進してきた。
姉貴が壁まで激突し、爪でエタルナが攻撃された。
「雷を直で喰らったはずなのに・・・!」
かなくんが水の防御魔法で、グリフォンの攻撃から一時身を守る。
グリフォンが大きく叫ぶと、空を暗雲が包み込んだ。
大きな竜巻が、5人を飲み込んだ。
竜巻に飲み込まれ、身動きが取れない中、グリフォンは竜巻の中でも自由自在に動き回り、強固な爪で次々と攻撃をしていく。
竜巻から逃れた後、グリフォンは立て続けに火炎放射を放つ。
かなくんの水魔法で防ぐ暇もなく防戦一方になっていく。
「ライジングブレード!」
アズライトの剣に大きな雷が宿る。
「抵抗、発動!」
それに続くように、かなくんの抵抗が発動。
かなくんを前に、グリフォンは次々と自滅していく。
「今だ!アズさん!!」
かなくんの合図とともに、アズライトが大きく跳躍をし、縦線を描きグリフォンの頭部を一刀両断した。
グリフォンから闇のオーラが抜けていくと、そこに風の宝玉が転がった。
「...風の宝玉...?なんだってこいつが...」
「...まさか、アフター関連の魔物が持ってるってこと...?」
姉貴がふと言い放った。
確かに牢獄ではアフター陣営のアンズ、シロオ、テルツキが持っていたし、孤島ではアフター陣営の黒野が呼び出した幻影の鯨が持っていた。更に今回はアフターに操られたグリフォンが所持していた。
つまり、宝玉は全て部下に持たせているということか...?
一行はひとまず、島の最南端にある「裁きの塔」へと向かった。
水、風、氷の3つの宝玉は、未だ静かに光を放ち続けている。
「裁きの塔は、今から数千年前にあったある逸話を元に作られたんだ」
ふらふぃーが口を開いた。
「人々は当時の文明を持ってして、神々の国へ近付くための大きな、巨大な塔を作り上げようとした。それも多くの奴隷を連れて重労働をさせるなどの非人道的な行為だったんだ。それに怒った神々は、塔を崩壊させ、人々を混乱に招き入れた。それにより人々は各地へと逃げ回り、今のように数多くの村や街などが出来ていると言われてる。」
「今でのその塔は誰一人として近付かないし、本当に物好きな冒険者でないと行こうともしないね。そうやっていつの間にか地図上に存在するだけの塔になってしまった」
アズライトらは最南端へ、50km近い道のりを数日かけて歩き続けた。
裁きの塔の前に、一つ不穏な雰囲気を醸し出す森があった。
しかし、その森もすぐに超えていき、裁きの塔へと到達した。
裁きの塔はもう苔むしており、手入れもされていないようだった。
頂上は雲の上にあるようだ...。
裁きの塔の内部へと、5人は入っていく。
「おっ?」
内部では、骸骨兵士がご丁寧なお出迎えをしてくれた。
「魔物だらけだ...」
骸骨兵士は基本的に防御力がペラペラの為、姉貴の短刀で基本的に一撃で殺せてしまう、が大剣もいともたやすく扱うため、少し手こずった。
「ブライトスフィア!」
姉貴の光魔法が、骸骨兵士を次々と倒していく。
やはり闇属性には光が有効のようだ。
更にアズライトの雷攻撃、エタルナの高い攻撃力から放たれるダメージや、ふらふぃーの遠距離、かなくんの水魔法なども相まって、順調に塔の内部の魔物は掃討できはじめていた。
螺旋状に続く階段を登っていくと大きなスケルトンが行く手を阻んだ。
スケルトンは巨大な両手剣と、盾を装備し、全長は約3mはあった。
両手剣を振り回し、塔ごと5人を攻撃していく。
「やぁっ!」
アズライトの攻撃が、盾で防がれる。
刹那、盾から無数の光線が飛び出し、アズライトが吹き飛ぶ。
更にエタルナ、かなくん、姉貴の攻撃も全て盾で防ぎ、振り払う。
「ホーリーランス!」
光状の槍が、スケルトン目掛けて飛んでいく。
それを両手剣で弾き返すと、今度は剣を前へと突き出し、そこから闇の破壊光線を放つ。
「うぉっ!」
間一髪、ふらふぃーの防御魔法が間に合った。
しかしすぐに防御魔法も破られ、ダメージを負う。
「抵抗!」
かなくんは能力を発動した。
しかし...
「うわっ!」
何故か、能力が発動できていなかった。
「かなくん!能力は何度も発動できるわけじゃない!」
ふらふぃーが思い出したように言った。
スケルトンが剣を叩きつける。
すると、一直線に鋭利な岩が突き出してきた。
「ウォーターカーテン!」
かなくんの水魔法が岩肌の威力を弱める。
しかしそれでも、多大なるダメージを全体に与えた。
「フレアストーム」
無数の炎弾が放たれ、スケルトンの盾を燃やす。
それに驚いたスキに、姉貴の攻撃が左手首を切断し、大剣が落ちる。
アズライトの疾風迅雷が、スケルトンを切断にした。
下半身、上半身が切断され、転がり落ちた。
それを姉貴の光魔法が浄化する。
裁きの塔を上へ上へと進んでいくと、2階らしきものに到達した。
「なんか聞こえないか?」
「え?」
エタルナが言った数秒後に、大玉が転がってきた。
「うわっ!」
全速力で塔内を走り回る。
横にあった隙間に逃れ、なんとか危機を回避した。
「あっぶな...こんなトラップあったのか...」
しっかりと周囲を確認し、先へ先へと進んでいく。
道中、見たことのない魔物がいた。
特に全身が煉瓦でできた兵士は特に度肝を抜かされた。
そして、屋上へと辿り着いた。
―裁きの塔 屋上―
裁きの塔は上部が完全に崩落しているため、頂上は雲の上に剥き出しの状態で佇んでいるため、強風が常時吹いているといった状況だ。
雲の上の青空は、それはそれは心奪われる景色でもあった。
頂上には、台座の上に一つの宝玉が置かれてあった。
それを手に取ろうとすると...
凄まじい強風とともに、巨大な竜が姿を表した。
「ッ...神の使い竜か...」
これも神話に記されていた「ドラゴン」だ。
ドラゴンは凍えるような息吹を放ち、あたりを一面凍らせる。
「フレアストーム!」
炎弾がドラゴンに全て命中するも、ダメージは与えられていない。
続けて姉貴の攻撃とアズライトの攻撃が命中するも、無傷だ。
ドラゴンは大きく叫ぶと、空へ羽ばたいた。
大空から、雷鳴を呼び寄せる。
無数の雷が、頂上へと降り注いでいく。
「くっ...ストリームウォール!」
渦状の風が雷を受け止めるも、数秒後に弾き返されてしまう。
「攻撃するスキがねえっ...がぁっ!」
雷属性の影響を受けないアズライトも、この攻撃には流石に身を守らざるを得なかった。
雷が止んだかと思えば、暴風を巻き起こし、5人を圧倒していく。
「放ッ電!!!」
アズライトが巨大な雷を呼び寄せ、ドラゴンに命中させる。
しかしそれでもドラゴンはケロっとしていた。
ドラゴンのヘイトを買ったか、ドラゴンが次々と息を放つ。
吹雪が、獄炎が、雷鳴が、暴風が、暗黒が裁きの塔の上で渦巻いていく。
「バイラルウォーター!」
かなくんの水の攻撃が一直線にドラゴンを貫いた。
しかし、それも何事もせず、アズライトらを圧倒する。
攻撃するスキが見えないまま、遂には...
「グオオオオ!!」
「まずい...っ!でかいのが来るぞ!」
巨大な炎弾が塔の最上部へと命中した。
塔は崩壊しかけ、巨大な煙を巻いて耐えた。
かなくんとふらふぃーが魔法で防護壁を作るも、それをいともたやすく破り、全体へ大ダメージを与えた。
全員が地面に倒れ込み、起き上がれないほどに陥った。
ドラゴンは青空に大きな雄叫びをあげ、真空波を放つ。
5人は吹き飛ばされた。
アズライトの意識が朦朧としていく。
「く...そ...」
遂に視界が真っ暗に澄み切ってしまった。
―――――――――――――――――――――――
意識が回復すると、そこは真っ暗な空間だった。
「...ねえ、私のこと知りたい?」
ふと、少女が現れアズライトに問いた。
アズライトは少し黙った。
「知りたそうな顔してるね。分かるよ」
「ああ...君は一体誰なんだ?」
「前にも言ったでしょ?私は君であって私じゃない。君は私であって君じゃないの」
少女はにこっと笑うと、こう言った。
「私はあなたの中に眠る"能力"を具現化した人間。そして、あなたの能力は...」
少女は笑顔を崩す。
「悲劇をばらまき、その悲劇を自らの手で終わらず哀れな人間だよ」
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