Episode-3 王都ルノギスト

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Episode-3 王都ルノギスト

夜を明かした後、一行は再び馬を走らせた。 西に約30km、途方も無い道のりに見えるが、馬なら3時間程度で問題がなければ辿り着くことができる。 むしろ問題なのは、その道中で魔物に襲われないかだが・・・。 昨夜、ふらふぃーとアズライトはエタルナから軽めの剣を渡されていた。 しかし魔物との戦闘経験が皆無に等しい二人に、まともに正面から戦って勝てる保証はない。むしろ7:3で負ける確率のほうが高いだろう。 まあ、いざとなれば... その時だった。 ふらふぃー側の茂みが怪しく動き回り、スライムが飛び出してくる。 更には植物と思っていたものも魔物だったようで、一気に囲まれた。 「ちょっと面倒だな、腹括れよ、二人とも」 エタルナは剣を抜き取ると、目にも止まらぬ速さでスライムを切っていった。更に植物系の魔物には火を浴びせ、燃やし尽くした。 「っと」 アズライトも馬から降り、マンドラゴラと対峙する。 更にふらふぃーも扱い慣れない剣を勇猛果敢にも振るい、敵を倒していく。30といた魔物は、20、10と徐々に減っていき、数分もすると0となっていた。エタルナは剣を戻すと、すぐに馬へ戻った。 「止まってる暇はないぞ」 そういってエタルナは馬を走らせた。 ふらふぃーとアズライトもすぐさまを馬を走らせる。 数時間ほど走ると、巨大な要塞が見えてきた。 「見えた、あれだ」 エタルナが一度馬を止め、後ろを振り向いた。 「あれが王都ルノギストだ。見ての通り、大陸でも圧倒的な防御力を誇る都市なもんだから、"要塞都市"とも呼ばれたりしているらしい。最も、"王都"として繁栄を続けてきた国だからな...俺はそう呼んでいるよ、何やら要塞都市は好かんらしい」 エタルナは微笑を浮かべると、ゆっくりと馬を歩かせていった。 「エタルナさん」 「ん、エタルナでいい」 「じゃ、じゃあ...エタルナ、その...ありがとう」 「好きでやってるんだ、感謝される筋合いはない」 アズライトが見るエタルナの背は、大きくも雄大に見えた。 「さて、着いたぞ」 ―王都ルノギスト 西門― ルノギスト場内に入ると、街はかなりの賑わいを見せていた。 「えぇ?祭りじゃないだろ...?」 「王都はいつもこんなのだ。朝っぱらから夜まで騒いでるよ」 アズライトとふらふぃーはあまりの生活感の違いに開いた口が塞がらなかった。旅を始めてから驚くことばかりだ。 「ふらふぃー、あまり離れすぎるなよ...王都は広いからな」 「あぁ、ご、ごめん」 「で、エタルナ...今からどこへ?」 「女王へ謁見だ」 ―ルノギスト場内― 「止まれ!何用で参った!」 門兵に止められた。 「襲撃された村の住人だ。通して欲しい」 「...」 門兵は何やら会話を重ねた後、一行を通した。 城の中は派手な装飾、赤色のカーペットなどが敷かれ、使用人や兵士達が忙しく動き回っていた。 「これが城の中らしい。最も、俺も入るのは初めてだ」 「へ、へぇ...」 ふらふぃーは余りの生活の違いに倒れかけた。 「ふ、ふらふぃーさん!?」 「せ、生活感が...違いすぎる...」 「ほら、早く行くぞ」 ―城内3階 謁見の間― またもやここにも門兵が居た。 そして案の定止められる。 そして事の経緯を兵士に話し、王に助けを乞いに来たと話した。 「ダメだ、まだ信憑性がない。それにお前たちを信用しているわけではないのだからな。さあ、帰った帰った」 城内に入った時とは真逆、厄介者のように扱われた。 しかし... 「僕はその人らの話を聞いたほうが良い気がするけどなぁ」 謁見の間から穏やかな声が聞こえてきた。 「へ、兵士長!」 (団長...?) すると謁見の間の扉が開き、中から緑の鎧を付けた男が姿を見せた。 「ようこそ、ルノギストへ、君たちを歓迎しよう」 ―――――――――――――――――――――――― 「私が王のカガミンだ。そしてこちらが...」 先程の緑の鎧の男が頭を下げた。 「ルノギスト騎士団の兵士長、アフターだ、宜しく」 更に王の右側で立っていた男が 「ルノギスト騎士団の団長、よもぎである」 「まあ、とりあえず話を聴こうか...」 アズライトらは事の経緯を説明した。 王は一通り話を聞いた後、口を開いた。 「なるほど...それじゃあ、一気に二つの集落が襲撃された...ってことか...えっと、山奥の村とメルドの街だね?よし、アフター。すぐに軍隊を派遣するんだ。現場の調査に当たれ」 「はっ」 アフターは敬礼をした後、複数名の兵士を連れてどこかへ去った。 「魔物の発生、情報提供ありがとう。それによく生きてここまで来てくれた。感謝する」 カガミンはエタルナたちに頭を下げた。 「ちょ、王様!?そんな...」 3人ともいきなりの行動に戸惑いを隠せずにいた。 「しかし...この機に及んで魔物が...?一体?」 「まあ、この話は後で良いだろう。城の宿舎の部屋を用意するから、今日はそこで休んでくれ。」 カガミンに敬礼を済ませた後、アズライトらは宿舎へ向かった。 ―宿舎― 「はぇ~王が優しい人で良かった...」 ふらふぃーがベッドに横たわりながら呟いた。 「まあ、今日の今まで街を存続させてきた一家のトップだからな...。政治能力、人望に関しては右に出るものはいないだろう」 「エタルナは、この街に来たことがあるの?」 「ああ、前に何度かある」 「へえ...エタルナってずっと冒険してたりする?」 「俺は帰る故郷がない。...だからふらふぃー、君と同じ境遇だ」 「...似たもの同士ってやつなのかな」 ふらふぃーは天井を見つめながら目を静かに閉じた。 不意にエタルナがアズライトに問いかけた。 「なあ、なんであの時、魔物と戦えた?」 「...わからない。けど、助けなきゃって思った。」 「そうか...。俺は火の影響を受けないから大丈夫だったが...」 「エタルナはなんで俺らを助けてくれたの?」 エタルナは少し考えた後、呟いた。 「どうだろうな、助けたほうが良いと思ったからだ」 「俺と同じ考えだ。」 「確かに、そうだな。」 アズライトとエタルナは少々の笑いを挟み、眠りに着いた。 ――――――――――――――――――――― 「石..葉は...寂.......」 「え?」 「あ、夜だ...もう帰らないと!またね!」 過ぎ去る少女と、それを追う少年。 月明かりを背に、大地を駆ける。 「あっ!」 不意に少女が声をあげた。 少年が駆け寄る。 「いてて...」 どうやら棘のある植物で足を切ったらしい。 「君も、こーんな緑の植物には気をつけてね!」 「はは、なんだよそれ」 ――――――――――――――――――――― 「アズライト~起きて~」 「んぁ...ふらふぃーさん?」 ふらふぃーに起こされたことにより、夢は途絶えた。 「あれ...あの子は?」 「?夢でも見てたのかな」 「さ、エタルナさんはもう出ちゃってるよ、僕らも行こう」 「行こうったって...どこに?」 「お尋ね者ポスターだよ!」
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