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夕食後、祖父母に連れられて真っ暗な外に出た。空の星は綺麗だが、ほとんど目に入らない。虫の声や、何か分からない獣の声が怖くて、真っ暗で足元もほとんど見えなくて、綺麗な星空を眺める気持ちにはなれなかった。
「怖い、何も見えない。」
そう言って、恵太君はおじいちゃんの左腕にしがみついている。私は、おばあちゃんと手を繋ぐ。
真っ暗な夜道をしばらく歩いていたら、突然おばあちゃんが言った。
「これから行くところは、この世とあの世の間だ。絶対におじぃとおばぁから離れちゃだめよ。迷子になったらこの世とあの世の隙間に引き落とされるよ。」
「狭間に引き落とされる」この言葉を聞き慣れていた私ですら、おばあちゃんの手を握る力が強くなる。暗くて見えないけど、恵太君の怯えかたはどれ程のものだっただろうか。
「怖いよ、帰ろうよ。」
時々、後ろから恵太君の怯える声が聴こえてきた。当然、ここから一人で逃げ帰ることは出来ない。見渡すことも出来ないから、恵太君も暗闇を進む。
暗闇から、徐々に川の水音が聞こえ始めた。音のする方へ曲がり、見渡すことの出来ない暗闇を見渡すと…
そこには、東京タワーのイルミネーションも顔負けな輝きが一斉に瞬いていた。東京タワーを見たことはないけど、そう思う。本当に、この世とあの世の間のような、幻想的な世界。
今年は、例年と気候がずれていた為、見れたのだとおばあちゃんが教えてくれた。
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