狭間に引き落とされて

　翌日、興奮覚めやらない恵太君は元気に起きた。

　私のお母さんは３人姉妹。長女と次女は、東京やら大阪やらと嫁ぎ、ほとんど顔を見せない。３女の母だけが県内に嫁ぎ、可愛い孫 — 私 — を祖父母に会わせている。
　そんなおじいちゃんにとって、恵太君は男の子の孫が出来たみたいで、とても嬉しかったようだ。

　朝から、恵太君とおじいちゃんが虫捕りに出かける。私とおばあちゃんは、山菜やキノコを捕りに行った。お昼に合流した恵太君は、オオクワガタやミヤマカブトを捕まえて、有頂天。

　私は知っていた。昨夜、恵太君が寝たあと、おじいちゃんはバナナの皮と蜂蜜を混ぜたものを木に塗りに行ったことを。

　私とおばあちゃんが捕った山の幸で作った炊き込みご飯。恵太君は、体重が2倍になってしまうのではないかと思うほど、美味しそうに頬張っているのが、なんだか嬉しかった。