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「それでは只今より、新郎水木咲夜さん、新婦麻さんの結婚ご披露宴を開宴いたします。開宴にあたりまして、まず始めに、お越しいただきました皆様に、新郎新婦からご挨拶があります。それでは、よろしくお願いします。」
咲夜が先にマイクに向かう。ああもう、何をしても素敵だ。良いかな、今日は皆の前でもうっとりしちゃっても。仕事場じゃないもんね。
「本日は皆さま、お忙しい所を私どもの為に結婚式ならびに披露宴までご参列いただき、誠にありがとうございます。特に病院勤務の同僚の皆さんには、勤務の調整をお願いしてご迷惑をおかけしました。こうして親しい皆さまのお顔を見ることが出来て、本当に嬉しいです。」
金色の光が弾けた。今日はいつにもまして、咲夜の笑顔が輝いている。
次は私だ。
「皆さま、私どもの為に貴重なお時間を割いて下さり、ありがとうございます。今日は咲夜さんを一目見ようと大勢の方がいらっしゃって、私もその祝福のほんの一端にあずかることが出来、幸いです。」
笑いが起こる。
「咲夜さんと私と司会の金子君は、高校一年生で出会って15年が経ちました。こうして皆さまの前に三人で立てることを本当に幸せに思います。本日は2時間と短い時間ではございますが、どうぞ皆さまおくつろぎ下さいませ。」
二人でお辞儀をして席に戻る。
「ゴールド泣き止んだね。」
「うん、そうだね。全く。絶対、後でしめる。」
「スピーチとはえらい違いだ。」
このすこぶるハンサムな人を肘でつつく。横に並んでるなんて。どうしよう、何もかも信じられないままで今日が終わっちゃうかも。
「泣き止みました金子です。本日は披露宴というより、祝宴だと新郎新婦から伺っております。ですので、特にスピーチもございません。どうぞ皆さま、ご自由に新郎新婦とご歓談下さいませ。」
俺はマイクのスイッチを切った。
「もう大丈夫?」
「うん、ごめんね。ハンカチありがとう。」
「いいってことよ。」
明るく笑うこの人は、ほんとに親分っぽい。
「わりい、また泣いちまった。」
俺はナイトとブルーの並ぶ席に行く。
「お前、そんなに涙もろかったっけ?」
「ったく、他人の結婚式でそんだけ泣くんなら、あんた自分の結婚式じゃあどうなるのよ?思いやられるわ。」
「ああ、期待通り号泣してやるよ。」
ナイトが突然俺を抱きしめた。
「ありがとう。」
シャッター音が響く。前もこんなことあったっけな、ああ、リレーん時か。こいつとはいつも競ってきたし、助け合ってもきた。ちきしょう、涙がまた流れる。俺はナイトを抱きしめ返す。
「おめでとう。」
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