22.旅立ち

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「水木先輩っ。」 「おう、寺田。」 「先輩、すっげえカッコ良かったです。俺写真撮りまくりました。」 「泣きながらね。」 寺田先生の横から冷静な声が聞こえる。 「吉永。」 「先輩、ご結婚おめでとうございます。」 「勤務調整してくれたんだね。ありがとね、嬉しい。」 「勿論です。恐れ多くも二世ですから。」 「紺野さんの写真も俺撮りまくりましたよ。だって匂いたつ満開の月下美人みてえだったから。満開の迫力が半端なくて。見とれました。」 「あら、美しい誉め言葉をありがとう。」 咲夜が何かを考えていたみたいだ。 「あ、そうか、寺田ちょっと待って。」 「おーい、ゴールド。」 ナイトが窓際で歓談しているゴールドに合図する。ゴールドは何事かと走ってくる。 「おう、何だ?」 「いや是非後輩を紹介したくてね。寺田、こちら俺の親友のゴールド。」 「あっ、先輩が前話してた、俺がそっくりって言う?初めまして寺田(かける)、外科医二年目です。」 「こいつが俺にそっくりなの?」 「そうよ、あなたたち名前だってペアみたい。」 私は二人を交互に見て笑った。やっぱり似てる。 「そうか、お前、駆って言うの?俺は、金子(あゆむ)。宜しくな。」 「はい、宜しくお願いしまっす。」 「お前、声でかいな。その体つきといい、もしかしてラグビー部?」 「はいっ、医大でもやってました。」 「俺も大学でラグビーやってた。」 「マジっすか。うわあ、すげえ嬉しい。俺ラグビー命なんで、やってた人に会うとほんと嬉しいんです。」 「ラグビー命なの?よし、男だ。」 「はいっ。」 「うわあ、ますます声でけえ。」 「よく言われます。」 「でもお前その声のでかさ、病院でヤバくないか?」 「営業でもヤバいでしょうが。」 「あ、祐希さん。」 「ごめんなさい、トイレ行ってて。」 「あの...こちらは?」 吉永が聞く。 「ああ、ごめんね、金子祐希です。」 「あ、えーと、”金子“さんですか?」 ナースの(さが)として、不明事項は確認せずにはいられないんだよね、わかるよ、吉永。 「そう、こっちが部下で夫の金子。」 「わざわざ部下って強調しなくても良くない?」 ゴールドが情けなさそうに言うのがおかしくて、みんなで笑った。 「ああ、ごめん、初対面ってつい仕事モードになっちゃって。今も、もうちょっとで名刺出しそうだったわ。」 どんだけ仕事漬けなんだよ、とぶつぶつ言うゴールドを、でも祐希さんはとても愛おしそうに見ている。 「祐希さん、でも金子になったんですね?ちょっと意外かな。」 「ああ、うん、会社では清水よ。その方が通りがいいからね。でも色々制度上、まだ夫婦同姓の方が手続きが簡単で。」 「早く好きな姓を自由に選べるようになるといいですよね。」 「そうだよねえ。麻さんは?」 「私は病院でもみんな咲夜とのことを長く知ってるので、水木でいきます。」 「そうなんだ。紺野さん、って字も綺麗で素敵な名字だったよね。」 「うふふ、ありがとうございます。」 祐希さんがさすがの営業センスで、ちょっと所在無げに立っている吉永を見ながら言った。 「で、寺田さん、こちらの綺麗な方は?」 「ああっ、俺としたことが。吉永理央さんです。俺のフィアンセです。」 「そんな大声で言わなくても。」 ああ、吉永も赤面してる。可愛いな。 「でも、俺嬉しくてみんなに宣伝したいからさ。」 とうとう吉永は下を向いてしまった。さらに可愛い。やっぱり吉永には、これ位ストレートな寺田先生がぴったりだな。大丈夫、あんたがめんどくさくなったら、また助け出しくれるよ。咲夜が私を救ってくれたみたいに。
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