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「水木先輩っ。」
「おう、寺田。」
「先輩、すっげえカッコ良かったです。俺写真撮りまくりました。」
「泣きながらね。」
寺田先生の横から冷静な声が聞こえる。
「吉永。」
「先輩、ご結婚おめでとうございます。」
「勤務調整してくれたんだね。ありがとね、嬉しい。」
「勿論です。恐れ多くも二世ですから。」
「紺野さんの写真も俺撮りまくりましたよ。だって匂いたつ満開の月下美人みてえだったから。満開の迫力が半端なくて。見とれました。」
「あら、美しい誉め言葉をありがとう。」
咲夜が何かを考えていたみたいだ。
「あ、そうか、寺田ちょっと待って。」
「おーい、ゴールド。」
ナイトが窓際で歓談しているゴールドに合図する。ゴールドは何事かと走ってくる。
「おう、何だ?」
「いや是非後輩を紹介したくてね。寺田、こちら俺の親友のゴールド。」
「あっ、先輩が前話してた、俺がそっくりって言う?初めまして寺田駆、外科医二年目です。」
「こいつが俺にそっくりなの?」
「そうよ、あなたたち名前だってペアみたい。」
私は二人を交互に見て笑った。やっぱり似てる。
「そうか、お前、駆って言うの?俺は、金子歩。宜しくな。」
「はい、宜しくお願いしまっす。」
「お前、声でかいな。その体つきといい、もしかしてラグビー部?」
「はいっ、医大でもやってました。」
「俺も大学でラグビーやってた。」
「マジっすか。うわあ、すげえ嬉しい。俺ラグビー命なんで、やってた人に会うとほんと嬉しいんです。」
「ラグビー命なの?よし、男だ。」
「はいっ。」
「うわあ、ますます声でけえ。」
「よく言われます。」
「でもお前その声のでかさ、病院でヤバくないか?」
「営業でもヤバいでしょうが。」
「あ、祐希さん。」
「ごめんなさい、トイレ行ってて。」
「あの...こちらは?」
吉永が聞く。
「ああ、ごめんね、金子祐希です。」
「あ、えーと、”金子“さんですか?」
ナースの性として、不明事項は確認せずにはいられないんだよね、わかるよ、吉永。
「そう、こっちが部下で夫の金子。」
「わざわざ部下って強調しなくても良くない?」
ゴールドが情けなさそうに言うのがおかしくて、みんなで笑った。
「ああ、ごめん、初対面ってつい仕事モードになっちゃって。今も、もうちょっとで名刺出しそうだったわ。」
どんだけ仕事漬けなんだよ、とぶつぶつ言うゴールドを、でも祐希さんはとても愛おしそうに見ている。
「祐希さん、でも金子になったんですね?ちょっと意外かな。」
「ああ、うん、会社では清水よ。その方が通りがいいからね。でも色々制度上、まだ夫婦同姓の方が手続きが簡単で。」
「早く好きな姓を自由に選べるようになるといいですよね。」
「そうだよねえ。麻さんは?」
「私は病院でもみんな咲夜とのことを長く知ってるので、水木でいきます。」
「そうなんだ。紺野さん、って字も綺麗で素敵な名字だったよね。」
「うふふ、ありがとうございます。」
祐希さんがさすがの営業センスで、ちょっと所在無げに立っている吉永を見ながら言った。
「で、寺田さん、こちらの綺麗な方は?」
「ああっ、俺としたことが。吉永理央さんです。俺のフィアンセです。」
「そんな大声で言わなくても。」
ああ、吉永も赤面してる。可愛いな。
「でも、俺嬉しくてみんなに宣伝したいからさ。」
とうとう吉永は下を向いてしまった。さらに可愛い。やっぱり吉永には、これ位ストレートな寺田先生がぴったりだな。大丈夫、あんたがめんどくさくなったら、また助け出しくれるよ。咲夜が私を救ってくれたみたいに。
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