虚実の女

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***** さて、本題に入りますと、私とあの方に関しましては、あの方が上海にいらした二年少しの間に女中としてお仕えしただけの関わりでした。 私個人としては大変お世話になりましたが、人様にお話してご本に載せるようなお話など出来そうにはありません。 そもそもお忙しい(かた)でお宅で過ごされる時間も少なかったですから。 上海で起こした事件についてですか? あの方が外でなさるお仕事について、私のような者につまびらかにお話されることは有り得ませんよ。 女学校も途中で退()した、十五歳の物知らずな小娘ですもの。 両親を相次いで亡くしまして、あの方に拾われたようなものです。 お茶はもう一杯、いかがですか?
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