明治26年の開校~目黒川女学館シリーズ

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A1 テロップ T「明治26年(1893)1月、ハワイに王政打倒の革命が起きる」 A2 ハワイ沖合(空撮) 客船「オーシャン・パシフイック号」が航行している。 A3 客船・船室 壁に張られたハワイ・オアフ島の地図。 カメラ、左にパンすると、有馬えりな、プリシラ・グラントの姿が写る。 どちらも洋服である。 えりな「(英語で)ハワイで革命が起きたそうで、この船はホノルルへは入れないそうです」 プリシラ「(英語で)アメリカ海軍の意向でしょう。海軍はハワイを基地にしたがっていましたから」 外から声が入ってくる。 外からの声「(英語で)日本の軍艦が来たぞ」 えりな、プリシラ立ち上がる。 A4同・デッキ 最初に、えりなひとりが走る姿を写す。 続いて、走るプリシラ。 大勢の船客が詰めかけている一角へ、えりな、プリシラが入っていく。 最前列の手すりのところまで来る、えりな、プリシラ、驚く。 そこから見える、巡洋艦「浪速」を捉えた映像。 A5 洋上 進む巡洋艦「浪速」の威容。 不気味だが壮大な音楽入って。 波をかき分け進んでいく。 ちょっと長めに写して。 「浪速」の側砲が一斉に火を噴く。 凄まじい射撃がしばらく続く。 A6 客船・デッキ えりな、プリシラの頭上にも砲撃音が響く。 プリシラ「War!!」 えりな「(英語で)いいえ、あれは威嚇射撃です」 そこへ船員があわてて駆けてくる。 船員「(英語で)日本の軍艦から招待状が来ております。艦内において、軍楽隊の演奏によるダンスパーティーを開催するので、ぜひご来艦いただきたいと」 えりな「(英語で)行きましょう。日本の軍艦が何をしに、ここまで来ているのかを知るためにも」 「巡洋艦浪速のテーマ」とでもいうべき曲終わる。 A7 巡洋艦「浪速」甲板 艦長・東郷平八郎大佐とえりなたち数名の船客少女が対峙している。 東郷「(スーパー)艦長の東郷でごわす。ようきやりもした」 えりな「(スカートの裾を引いて一礼した後、姿勢を直して)日本の軍艦が、ハワイを征服に来たと、船客が口々に申しておりますが」 東郷「それが事実であるとすれば、いかがしもんそ?」 えりな「日本が国威を海外へ向かって発揚する良き機会であるかと(本心ではない)」 東郷「(豪快に笑う)おいどんたちは、あくまでも居留民保護できたでごわんど。そのような野心は毛頭ございもはん」 えりな「(何もいわず微笑でこたえる)」 東郷「では、早速、おいたちの軍楽隊の演奏を聴いていただきましょうか」 軍楽隊、ローサスの「Over the wave」を奏で始める。 A8テロップ T「その頃、日本では」 A9目黒村・学館舎の敷地内(夜) スーパー「東京府・目黒村」  篝火が炊かれた中、白たすきの男たちが、棒などを持ち、まるで一揆のような物々しい雰囲気。 学館舎の建物の前に、床几に座った藤宮れいかがいる。 その傍らに、山田夏輝。 夏輝「伝達!伝達!」 その声に、ざわめいた雰囲気が一斉に収まり、男たちはれいか・夏輝の前に整列する。 夏輝「これより抗議行動をする上での規律を申し上げます。ひとつ、抗議相手は殺さないこと、 ひとつ、実行委員会からの許しがない限り、放火はしないこと、ひとつ、抗議先の邸宅からは金品を一切奪わないこと、ひとつ、抗議先のお酒は一滴たりとも飲まないこと、以上を破ったものは殺します」 れいか「(立ち上がり)明治20年以来、私たち目黒村及び三田村の村民は、三田用水の使用権を巡って、海軍火薬製造所及び日本ビール会社と戦って参りましたが、本年4月に海軍火薬製造所の滝の川村への移転が決まった今、残るは日本ビール会社のみであります。私ども村民の共有財産である三田用水の豊かな水を詐取する日本ビール会社を懲らしめるためにも、本日の抗議行動を貫徹致しましょう」 男たち、「おー」と鬨の声。 夏輝「それでは、出発致します。まず、第一大隊、前へ」 夏輝、松明を受け取って、男たちの先頭に立ち、歩き始める。 学館舎の敷地内から出ていく隊列とおびただしい松明をバックに。 N「地球の全てが帝国主義の嵐に包まれていたこの年、ひとつの女子校が開校することになる。その校名は、目黒川女学館」 壮大なテーマ曲入って。
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