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57同・境内(夜)
白襷・鉢巻姿の武装村民たちが集まっている。
孫策がいて、そこへ大きな箱が運ばれてくる。
蓋が開けられ、中から数丁の鉄砲が姿を現す。
咲苗「(来て、覗き込んで)これは」
孫策「秩父のときに集めた鉄砲だ。困民党が壊滅した後、ひそかに大阪へ運ばれていたものが、また、ここへ来た。さなちゃんには分かるのか?」
咲苗「この弾薬の匂いは、竜勢で使う火薬のもの」
孫策「さなちゃん、秩父の出か?」
咲苗「(答えない)」
れいか「もうそれ以上はやめて」
孫策、れいかを見る。
れいか「さなちゃんの過去は、私も承知の上なの。だから」
孫策、笑って鉄砲をとる。
れいか「本隊、出発します。目指すは藩閥の首魁・西郷邸!」
鳥居をくぐって出発する武装農民たち。
58西郷邸・洋館応接間(夜)
従道、恭平、えりな。
外からおびただしい松明の灯りが見える。
西郷「有馬さん、例の手筈で」
恭平「西郷伯もお屋敷が大変なことで」
西郷「これも維新以来の運命とあきらめております」
えりな「お父様、伯爵様」
西郷、恭平、えりなを見る。
えりな「私は新しくできる女学校の生徒になります」
恭平「えりな、おまえは」
えりな「今日の一件がお父様たちの思惑通りになるにせよ、ならないにせよ、村の人たちともうまくやっていかなくてはいけないでしょう。それを考えたら、ビール会社の社長の娘の私が目黒村の女学校に入っておくのは悪い話じゃないでしょう。それに」
西郷「(聞いている)」
えりな「それに、この女学校、なんだか面白そうだし」
59目黒川沿いの道(夜)
装農民の隊列が続く。
先頭に、れいか・夏輝のコンビ。
途中、れいか、夏輝、お互いうなづきあって、それぞれの隊列が分かれていく。
60西郷山・斜面(夜)
れいかとその隊、すでに途中まで登っている。
眼下に、目黒川沿いに進む夏輝の隊が見える。
れいか、頭上を見上げる。
はるか上、柵のところに、海軍陸戦隊が銃を構えて展開している。
れいか、体を伏せながら進み、後ろで鉄砲を構える孫策たちに、
れいか「まだ撃たないで」
と様子をうかがいながら進むと、
海軍陸戦隊、一斉に銃撃を加えてくる。
れいか、伏せる。
孫策、鉄砲を撃つ。
続いて打つ武装農民たち。
撃った弾が柵に当たる。
れいか「待って」
孫策たち銃撃を止める。
れいか「あの兵隊さんは空砲を撃ってるわ」
孫策「どうして分かる」
はるか下の桜の樹を眺めて。
れいか「もし弾が込められていたら、十分、下の桜の樹に届いているはず。ところが、弾が樹に跳ねる音が全くしない」
孫策「なるほど」
れいか「とにかく頂上まで行ってみましょう」
孫策「おおっ」
とまた一同動き出すが。
れいか「待って」
孫策「今度は何だ」
れいか、目を凝らして、はるか頂上を見上げる。
遠くに銀色の物体が見える。
近くから大きく写すと、陸戦隊の傍らにある。
れいか「あれは機雷よ」
陸戦隊、ゆっくりと機雷を動かし、転がす。
斜面を勢いよく転げる機雷。
れいか、孫策たち、一斉に駆け下りる。
迫ってくる機雷。
走るれいかたち。
が、機雷、途中で止まる。
れいかたち、振り返って、おそるおそる機雷へ近づく。
れいか、コンコンと機雷を叩くが、何事も起こらず。
れいかたち、安心して、機雷を後ろに再び上って行く。
機雷、程なくしてまた動き、転がり、落下。
目黒川へ落水する。
れいかたちの背後、はるか下で大爆発するのが見える。
陸戦隊の将校、サーベルを抜き、
将校「突撃!!」
陸戦隊、一斉に駆け下りる。
瞬く間に、武装農民たち、陸戦隊に飲み込まれ、れいか、抵抗するが、すぐに組み伏せられてしまう。
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