明治26年の開校~目黒川女学館シリーズ

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66建設途上の女学館校舎 まだ骨組みだけの校舎。 大工がせわしく働いている。 みやび、れいか、進行具合を打ち合わせながら、敷地の一角で渚ら数名の生徒と話している孫策を見ている。 れいか「建設具合を見せながら、なぎちゃんたちに説得してもらおうと考えていたのですが、難しいようですね」 みやび「孫策さんだけではないわ。村民全体の偏見と疑いを払拭しないと」 67北村邸・牡丹庭 みやび、美那子がいる。 美那子「宮様に頼んで、女学校に ご真影を奉戴するというのは名案ね。さすがに天皇の写真の横にマリア様の像は置けないから」 みやび「ご皇室のご意向を借りれば、村民も納得してくれるでしょう」 美那子「それでうまくいったとして、宮様とはどうするの?」 みやび「あの方の負担にはなりたくありません」 美那子「私も北村とは大恋愛の末結ばれたけど、親の理解は得られなかったわ。だから、あなたの気持ちはよく分かる」 みやび「私は私なりに生きていきます。美那子さんとは違う生き方になるかもしれませんが」 美那子「(笑う)」 68西園寺邸・庭 松濤宮と西園寺公望が歩いている。 スーパー「西園寺公望」 西園寺「庶民の娘では、宮内庁の許可は難しいだろうな」 松濤宮「覚悟しております」 西園寺「私も惚れた女と一緒になりたいから、宮内庁の許可が必要な正妻など必要ないと考えておる」 松濤宮「西園寺公には、かつて、この国でもっとも卑しめられている階層の娘と結婚したいといっておられたと聞いておりますが」 西園寺「庶民の娘にも戸主の許可が必要だという。バカな制度だ。維新で開明的になったと思っておったが、外国から帰朝してきたら、何も変わってはいなかった」 松濤宮「誰かの許可がないと愛し合っている男女が結婚できないのであれば、私も正妻など要りません」 西園寺「その心学塾の教師とかいう娘とは、生涯、添い遂げるつもりか」 松濤宮「(頷く)」 西園寺「ご真影の件、どうなるか分からないが、宮内庁にかけあってみよう」 松濤宮「(深々と一礼)」
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