明治26年の開校~目黒川女学館シリーズ

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69西郷邸・洋館応接間 窓から生徒が遊んでいるのが見える。 みやびとプリシラがテーブル席で対座している。 みやび「もう9月ですわね」 プリシラ「そろそろ開校日を決めないと」 みやび「10月の大安吉日が良いかと」 プリシラ「いいえ、日本の暦はこの際考えてはいけないわ」 みやび「どういうことですか?」 プリシラ「10月13日がよいと思います」 みやび、立って、壁の日めくりカレンダーをめくる。 「10月13日」が出てくる。 みやび「(見て)10月13日」 「10月13日」のカレンダー。 みやびの声「金曜日」 みやび、振り返って。 プリシラ「13日の金曜日は、ゴルゴダの丘にて、イエス・キリストが処刑された日として知られております。その日を開校日にすれば、誰もキリスト教の学校とはいわなくなるでしょう」 みやび「先生(と近よりテーブルの上で手をとる)宣教師の妻であるあなたがよく(すすめてくれました)」 プリシラ「東洋の一隅に棲む少女たちに、文明の光照らし渡されることを主もお望みでしょう」 70目黒川神社・境内 みやび・れいかがいる。 松濤宮が走ってくる。 みやび「どうでしたか?」 松濤宮「ダメでした。ご真影はとりあえずは、公立の学校のということでして」 みやび「そうでしたか(落胆)」 れいか「どうしましょう?」 みやび、ニ、三歩歩いて考える。 背後の松濤宮、れいか、不安そうな顔をしている。 考え込むみやび。 が、ふと振り返る。 神社の御堂が見える。 みやび「そうだわ。この神社に官位をもらえばいいのよ」 松濤宮「神社に官位を」 みやび「学校の隣にある神社に官位を授けていただくの。神社は内務省管轄だからうまくいくでしょう」 れいか「でも、この神社は村の産土神。格式も無いし」 みやび「だから、いいのよ。格式も官位も無いから新規にいただくの。極端な話、いちばん下の官位でいいの。その官位授与式と開校式を同日同時に行えば、キリスト教がどうのなんて反対はなくなるわ」 れいか・松濤宮、頷く。
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