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7西野利兵衛邸(夜)
大きな門構えの家。
その前に大勢の民衆。
指揮を執っている山田夏輝。
N「三田用水は、目黒村・三田村村民の代表から構成される三田水利組合が管理していた。その組合員にビール会社と結託して不正を働く者がいるという情報があった」
掛屋で門を押し破り、突入する民衆。
戸障子を蹴破って、中へ押し入る。
二階に上がった男たち、屋内のものを手当たりしだいに外へ投げる。
落ちてきた物を踏み割る男たち。
N「西野利兵衛は、その中の有力な一人であった」
屋内から出てきた夏輝、手に巻物を持っている。
N「それは、目録であった。ビール会社から西野に供与されていたものは、小切手・貴金属ともいわれ、その一覧であったという」
夏輝の背後で、暴れ、壊す、民衆。
N「この日、数軒が襲撃・破壊されたという」
8椿山荘・森の中(夜)
軍人が走る。
9同・寝所前(夜)
軍人「(走ってきて)目黒村で百姓数百人が打ちこわしであります」
戸が開き、山県有朋が現れる。
スーパー「枢密院議長・山県有朋」
山県「東京府下で暴動とは何事か!速やかに鎮めよ」
10皇居・実景(夜)
11同常盤殿(夜)
明治天皇の前に、松濤宮・東信寺の若き皇族・公家がいる。
明治天皇「目黒とやらで民が騒ぎを起こしておるようだな」
松濤宮「ご宸襟を悩まし申し訳ありません」
明治天皇「これも議会というものができたためであるのかのう」
東信寺「おそれながら明治新代の人智が進んだ結果であると」
明治天皇「民が自我に目覚めることを朕は喜ばしく思う。だが、民党がこれを扇動することは良しとはしない。憲法ができたとき、朕は、伊藤(博文)・山県らに、民党が、憲法の規定により、内閣を組織したるときも、陸海軍はとくに朕が手許に置くと明言しておいた」
松濤宮「賢明なご判断です」
明治天皇「此度も山県は陸軍に出動を命じるであろうが、民と兵の双方にケガがあることを朕は好まぬ。宮、東信寺」
松濤宮、東信寺、姿勢を正し、低頭。
明治天皇「岩倉(具視)が将来を嘱望していた卿らにとくに命ずる。目黒村の騒動を収めよ」
12目黒村への道(夜)
松濤宮、東信寺の騎馬が疾走
13学館舎・敷地内(夜)
篝火。
民衆が握り飯を手に手にしている。
それを配っている木村咲苗。
咲苗、立ち止まり、一点に目を向ける。
ひらひらと揺れる「自由自治元年」の旗。
それを見て、咲苗、顔を曇らせる。
れいか「(来て)思い出す?十年前を?」
咲苗「いいえ」
れいか「あのとき、私は、まだ制服向上委員会に入っていなかったけど、すごい騒ぎだったって聞いたわ。三千人が立ち上がったのだから」
咲苗「今夜の打ちこわしもすごいじゃないですか。さすが、れいか様です」
れいか「まだ目的は達していないわ。そろそろ、なっちゃんがやるころね」
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