明治26年の開校~目黒川女学館シリーズ

4/18
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
14社長室(夜) 社長の有馬恭平と技術主任の橋口文蔵がいる。 N「有馬恭平は、三井物産から派遣されてきた日本ビール会社の社長であり、経営不振であった同社を、ドイツからの最新機械・技術の導入と人事制度の改革により、わずか一年で立て直した功労者であった」 恭平「外が騒がしいようですね」 橋口「わが社にご協力いただいている方々の家が襲撃された模様です」 恭平「事業協力費をお配りしたのが仇になってしまいましたな」 橋口「村の人たちにご理解いただこうと努力して参りましたのに残念です」 15ビール工場・敷地内(夜) 壁から降りてくる夏輝と数人の男たち。 男たち、がんどうで地面を照らす。 そこに、くっきりと現れる土管。 N「それは口径六寸の土管であった。その口径は水利組合との契約である一日8坪の利用水量を上回る20坪の取水をもたらすものであった」 夏輝、土管を確認した後、悠々と工場本棟の前を正門へ向けて歩いていく。 16学館舎・敷地内(夜) 前シーンと直結で。 夏輝が入ってくる。 咲苗「夏輝さん、お帰りなさい」 れいか「なっちゃん、お帰り。どうだった?」 夏輝「(目録を出して)西野の家からはこれを。ビール会社では、噂通り、六寸の土管があったわ」 れいか「これでビール会社を叩けるわ。ご苦労様」 咲苗「さっ、夏輝さん、お茶でも(と誘う)」 そこへ馬のいななきが聞こえてくる。 咲苗、いななきの方を見る。 騎馬で松濤宮、東信寺が突撃してくる。 二騎に追い回される民衆。 N「このとき突撃してきた皇族と公家の姿が、往年の鳥羽・伏見の戦いのときの仁和寺宮嘉彰親王の東寺出陣を思い起こさせたと、現場にいた目黒村民の証言にある」 松濤宮、馬を止めて、下馬し、講舎の中へ入っていく。 一騎のこった東信寺が孤軍奮闘して、民衆を追い回す。 講舎から、松濤宮に連れられたみやびが出てくる。 そのみやび、手に「引き揚げ」と書いた白い紙を持っている。 みやび「みなさん、今夜の抗議行動は終わりです」 れいか「佐渡のときも、小川久蔵という警察に捕らわれていた男が同じようなことをしたわ」 みやび「この宮様は、おそれおおくも天皇陛下直接の叡慮により、ここへいらしたの。これ以上騒げば、朝敵になってしまうわ」 れいか「天皇がこわくて民権が主張できるか」 馬上の東信寺、錦旗を出す。 それにおそれをなす民衆、少しずつあとずさりする。 N「民衆は静かに収まり、引き揚げを開始したという」 錦旗。 松濤宮とみやび。 N「天皇の権威は絶対であった」 れいか、扇子を地面に叩きつけ、夏輝に腕を引かれるように去っていく。 みやび「(松濤宮に一礼し)ありがとうございました」 松濤宮「これで明日いや今日ですか、横浜へカナダから来られる先生を迎えにいけますね」 みやび「おかげさまで」 東信寺「(下馬して)いよ、ご両人は相変わらずお熱いな」 松濤宮、みやび、顔を見合わせる。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!