明治26年の開校~目黒川女学館シリーズ

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17横浜港 翌日の昼―。 明治の横浜らしい埠頭から、沖合の客船オーシャン・パシフィック号が見える。 そこからはしけが、桟橋に横付けされる。 出迎え客の中から、みやびが見ている。 はしけから上がってくる、プリシラとえりな。 みやび「グラント先生」 プリシラ「おお、星野みやびさんですね」 みやび「星野でございます。これは日本語お上手で」 プリシラ「船の中で、えりなに教えてもらいました」 えりな「有馬でございます」 みやび「有馬というと、ビール会社の社長様の」 えりな「父です」 みやび「(昨夜の騒動を思って複雑な気持ちになるが)グラント先生、まずはこの横浜でご一泊を。明日、汽車で目黒停車場までお連れしますので」 18目黒川の風景 そのまた翌日。 画面に三台の人力車が現れる。 みやび、プリシラ、えりながそれぞれ乗っている。 その三台が、ちょっと小高い所に止まる。 プリシラ「Oh!Good!wonderful!」 低い草原の中をゆったりと流れる目黒川。 所々に見える水車。 松の木の間から見える富士山。 西郷山斜面―上の方に白いラティスが見える。 プリシラ「私が生まれ育ったプリンスエドワーズ島にも劣らぬ美しい村です」 みやび「この目黒川の畔に、私たちの学館舎はあります」 えりな「星野先生。私は恵比寿前の自宅へ直行しますので」 と一台、先に走り去っていく。 19学館舎・敷地内(朝) 塾生たちの通学風景。 その中を威風堂々とれいか・夏輝のコンビが歩いていく。 れいか「なっちゃん。本日のスケジュールは?」 夏輝「(手帳を見ながら)8時20分、大地主の娘で最近生意気な幾島友香にヤキを入れます。ひと仕事終えた後で講義開始。午前中ゆっくりと体を休めていただきお昼ご飯になります」 れいか「今日のメニューは?」 夏輝「大月ハナ、鈴木イト、以上二名の弁当を没収!!」 れいか「おいしそうね」 夏輝「昼飯後、二時間ゆっくりと体を休めていただき、3時20分、最近、男関係が激しい栗野サトにヤキを入れ、4時10分、近頃、れいか様に言い寄ってくることが多い知道舎(学館舎と同系列の男子専門の心学塾)の番長と権之助坂の茶店にて会談。向こうは逢い引きのつもりですのでお気をつけられて」 れいか「フン!勘違い男は困るわね」 夏輝「5時15分、目黒尋常小学校のガキ大将女子グループの視察、以上ですわ。お姉さま」 れいか「今日もハードスケジュールですわね、ほほほほほほ」 と高笑いしながら進むと、幾島友香が歩いているのが見えてくる。 れいか「ムっ・・・・あれは、幾島友香ね」 夏輝「(懐中時計を見て)8時20分ちょうどですわ」 れいか「早速、スケジュール消化と行きましょうか」 れいか、幾島友香の前に来て、いきなり平手打ちを食らわす。 幾島「何をなさるんです!」 れいか「あなたのような小作人から搾取した年貢でおしゃれしているような女の子がキライなの」 と容赦なく平手打ちを連弾していく。 その間、夏輝が幾島の袴の紐に手をかける。 天空に翻る袴。 袴とられて、着流し姿で泣く幾島。 N「当時の日本人にとって袴は皮膚の一部であり、ことに女性がそれを奪われることは、下着姿になることに等しいものがあった」 渚の声「待って、れいれい」 れいか、振り向くと川上渚がいる。 渚「袴を返してあげて」 れいか「なっちゃん、スケジュールには太めの子と喧嘩なんて入ってた?」 夏輝「いいえ」 れいか「では追加しておいて。8時23分、川上渚とれいか様は手合わせと」 夏輝「でも、なぎさんとれいか様は無二の親友」 れいか、渚と対峙して間合いを詰めていく。 みやびの声「おやめなさい」 れいか、渚、声の方を見る。 人力車で来る、みやび、プリシラ。 人力車止まって、みやびが降りてくる。 みやび「もう講義の時間よ。早く中に入って」 いわれて、れいか・夏輝、講舎の中へ。 渚、袴を拾ってやり、幾島を誘って中へ。 プリシラ「(人力車から降りてきて)粗暴な子ね」 みやび「民権家なんですよ」 プリシラ「What?」 みやび「革命家。アクティビストのことです」
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