HAPPY HALLOWEEN!

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HAPPY HALLOWEEN!

 ここはカフェ『彩』。  いろんな世界の人々が集まる事のできる不思議な喫茶店。マスターは神代くるみ。そして看板息子(猫又)の漣が店員だ。 「ねぇ、くるみ。今年はお店でハロウィンパーティーしない?」    カウンター席に座っていたショートボブの女の子、天野梨子が目を輝かせて話しかけてきた。梨子はお店の常連客で、イベント大好きな女の子だ。 「お、お店で?? そうだなぁ……うん。去年は梨子のお友達のパーティーに、参加させ貰ったけど、今年はお店でやる? 折角だし常連さんも呼んで……ね、漣ちゃん」  漣はニャッニャッと鳴くと、二又に割れた尻尾をゆらゆらとさせた。    ――――カラン、カラン。  入店を知らせる音がして、視線を向けると買い物帰りの、エマとメリッサが笑顔で入ってきた。 「あら、梨子も来ていたのね。二人でなんの相談をしているのかしら?」 「久しぶりです、梨子さん。くるみさん……漣ちゃんも、久しぶりね!」  メリッサは、漣を見ると一目散に駆け寄り頭を撫でた。漣は嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らして両足を広げる。  そんなメリッサを見守りながらエマはカウンターに座った。くるみは二人に温かい紅茶を出しながらにこやかに微笑む。 「エマさん、メリッサちゃん、こんにちは。実はね……もうすぐハロウィンでしょ。だからハロウインの当日に閉店後にでも皆でパーティーしないかって、梨子とお話していたの」 「あら、懐かしいわ。私も昔はハロウィンを楽しんでいたのよ」 「ハロウィンって何ですか??」  メリッサが不思議そうに質問すると、エマはくすくすと笑った。彼女の世界では、人間の文化は滅んでしまっているので、知らなくても当然だろう。 「そっかぁ、メリッサちゃんは知らないか。えっとね、仮装して皆で楽しむの、パーティーみたいなものだよ」  梨子がカウンター越しに、エマを挟んでメリッサに話しかけると、パァッと顔を綻ばせた。 「わぁ、楽しそう……! マナと若菜ちゃんも呼びましょう」 「もちろんだわ、そう言えばもうすぐあの二人もここに来るはずなんだけど、どうしたのかしら」  エマが時間を気にしていると、再び扉が開く音がして、若菜と手を繋いだマナが入ってくる。 「あっ、今日は全員集合だね! くるみちゃん、梨子ちゃん、エマさん、メリッサ、漣ちゃんも、こんにちはだよ!」  元気な挨拶をするマナの後ろで、皆の注目が集まると、直ぐに顔が赤くなってしまう赤面症の若菜がもじもじとしていた。 「こ、こんにちは。待たせちゃってごめんね」 「大丈夫だよ、若菜。貴女の事だからきっと何か巻き込まれたんでしょうね、二人とも座って座って」 「うん、ちょっと……道を聞かれて」  マナに手を引かれながら、くるみに促されて二人でテーブル席に座るとつかさず、マナが興味津々で目を輝かせた。 「皆の会話が少し聞こえたんだけど、パーティーでもするの? それなら私、お料理係したい」 「マナ、ハロウィンパーティーをこのお店でしようと話していたのよ。貴女の世界にも無かったわよね。トリック・オア・トリートと言ってお菓子を貰うイベントなのよ」 「とりっく、おあ? 難しいです」 「とりっく、おあ、とりーと、イベ……南蛮の行事なの?」 「なにそれ、魔法!?」  エマの学校の先生のような説明に、若菜とメリッサが同時に首を傾げ、マナは興味津々で食いつくように聞き返した。 「おばけの格好をして、トリック・オア・トリート、って言うの。お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ、って言う事なんだよ。  だからね、みんなで仮装してお菓子をお互い配り合うの」  梨子がこちらを向くとフォローするように付け加えた。  皆は目を輝かせて、お互いの顔を見合わせた。  女の子と猫又の漣だけのハロウィンパーティーを想像するだけで、楽しくなる。 ✤✤✤    今日はずっと楽しみにしていた、ハロウイン当日だ。  南瓜で作ったジャックオーランタンの飾りに火を灯して玄関先に置くと、くるみは店の中に入る。  この日の為に皆が楽しめるように、莉子と色々な遊びを計画していた。  閉店後のカフェは、コウモリや可愛い南瓜や悪魔の飾り付けがされている。くるみは可愛い吸血鬼の格好をして、バスケットにお菓子を入れると、おばけがくるのを楽しみにした。  ――――カラン、カランと言う音がして女の子達の可愛い声が響いた。 『トリック・オア・トリート!』  コウモリの羽を生やしたメリッサは少し恥ずかしそうにしながら手を差し出し、おばけの髪飾りをした可愛いドレスを着たエマも、頬を染め遠慮がちに手を差し出していた。  梨子は、骨が描かれた可愛い服で、くるみとハイタッチをする。  マナは可愛い魔女の格好で、ご丁寧に箒まで持っていてくるみに抱きついて来た。  そして背後でもじもじとしていた、着物姿に二本の蝋燭を頭につけた若菜に、くるみは目を丸くする。 「あれ、若菜……それは、牛の刻参り!?」 「だ、だって、おばけって言ったらこういうのしか思い浮かばかったのっ」 「うんうん、可愛いよ……呪われてもいいかも。みんな凄く可愛い、お菓子あげるね」  くるみは、それぞれにお菓子を渡すと店に招いた。それぞれお菓子を互いに分け合い、ジャックオーランタンのパンプキンケーキを切り分けた。  いくら騒いでも、お隣さんまでの距離が遠いので平気だ。シャンパンを開けて、ボードゲームをして楽しむ。   「もう、ちょっとくるみ、この格好歩きにくいよー」  楽しそうにはしゃぐ女子の輪から離れた所で、長靴をはいた猫の格好をさせられていた漣が、ブーブー文句を垂れていたが、くるみに抱きあげられ、若菜とメリッサが交互に膝の上を寝床として提供したので、直ぐに機嫌を良くした。  今夜は眠くなるまで、女の子だけの、ハロウィン&パジャマパーティーだ。  
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