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それは唐突な問いだった。
「えっ……? 風景画、だと思ってたけど」
「ふーん。じゃあさ、麗華にとって、わたしってどんな人間?」
戸惑いながら、それでも、真剣に答える。
「どこまでも絵を描くことに愚直で、真剣で、それ以外のことなんてどうでもいいって感じで、ちゃんと才能もある。私は、そんな美玲のことを格好良いと思っているよ。誰よりも尊敬してる」
「そっか」
美玲が、画集を手に携えながら立ち上がる。
もうこれ以上は聞きたくないとばかりに。
「ごめんね。やっぱり、麗華は、私の部屋にはあげられないや」
パタリ、と。
扉が閉まるその音は、彼女の拒絶の意志そのものだった。夏だから蒸し暑いはずなのに、体内を巡る血は凍りつきそうなほどに冷えていた。
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