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美玲の部屋に入ることを拒絶されたあの夏の日から、あっという間に半年が経った。あれから、私と彼女の関係は想像していたよりかは悪くもならず、だけど平行線をたどっている。
春にルームシェアを始めて、もう冬になった。
だけど、あの部屋にだけは、まだ入れてもらったことがない。
そんなある日、唐突に思いがけないチャンスが巡ってきた。それは、けっきょく優くんとは別れてしまった私に新たな彼氏ができた翌日の出来事。
美玲はサークルで帰りが遅く、私には珍しく何の予定もない日だった。
リビングで椅子に腰掛けながらぼうっとしていたら、美玲の部屋に繋がるドアにわずかな隙間ができていることに気がついてしまったのだ。
美玲は家を留守にする時、確実にあの部屋を施錠していく。用心深い彼女が、こんなうっかりミスをするなんて珍しい。
秘密の部屋に入りこむまたとない機会が巡ってきた瞬間、動悸がしてきて、呼吸が浅くなった。
この機会を逃したら、次は、もう多分ない。
誘われるように、よろよろとドアノブに手を伸ばす。
人は、秘密に、抗えない。
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