27人が本棚に入れています
本棚に追加
錆びついたロボットのようにぎこちなく振り向けば、そこには、口元に自嘲気味な笑みを浮かべる美玲が立っていた。
「この際だから、わたしの全てを教えてあげるよ。わたしは、麗華のことを友達だと思ったことなんて一度もない。わたしは、あなたに恋をしていたから」
いつも絵を描いている白い手が伸びてきて、立ち尽くした私の首を勢いよく締め上げる。
「わたしはさ、ずっとずっと、あなたへの叶わない恋心を絵に閉じこめ続けていたんだ。だけど、あなたには彼氏がいたし、この想いが叶いやしないことは最初から分かってた。それでも、どんな形でも傍にいたいと願ってしまったから、ルームシェアを承諾したんだよ。それなのにさ、無邪気なあなたは、馬鹿みたいにわたしのことを絵に愚直な聖人だと思ってるんだ。風景画なんて、わたしにとってはフェイクでしかないのにね」
――ずっと、わたしの全てを知りたいだなんて無邪気な顔で言ってのける傲慢な麗華が、愛おしくて、殺したいほど憎らしかったよ。
ありったけの力をこめられた美玲の爪の先から、彼女の痛みと魂ごと雪崩れ込んでくるようだ。
「ねえ。教えてよ、麗華。わたしたちは、これで理想に近づけたんだよね。それならさ、どうして麗華は、そんなに怯えた顔をしてわたしのことを見ているの?」
【完】
最初のコメントを投稿しよう!