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昔、ある村にはなちゃんという娘がいました。はなちゃんはまだ小さいのに掃除や洗濯が得意です。でもそれより得意なのは人の心を読むこと、それと動物でも植物でも何とでも話が出来ることです。また家族や村の人もはなちゃんがいつまでも歳をとらないのを不思議に思っていて、皆だんだん意地悪になってきました。それははなちゃんはいつまでも小さな娘のままなのに、村の人達はどんどん年老いて死んでいくからです。 その日、はなちゃんは村から遠く離れた桃の木との約束がありました。桃の木は村ができるはるか以前からずっと生き続けている太古の木です。約束とははなちゃんが道先々で出会った友達を桃の木の前に連れて来ることでした。桃の木の所に行く前にはなちゃんは握り飯を作っていました。すると、それを見ていた若い娘達が話しかけました。 「ほんとにおまえはいつまでも子供のままだよ」 「それなのに握り飯はしっかり食べるんだね」 はなちゃんは村の娘達の心が読めるので、何も言いませんでした。娘達の心の中は、嫉妬と苛立ちが渦巻いていたからです。はなちゃんは野いちごのような舌を出してあっかんべーをすると少し気が紛れました。そして何も言わず村を後にしました。
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