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村を出てしばらくすると、辺りの木々がはなちゃんに話しかけました。
「やあ、はなちゃん。君はたくさんの生き物と話が出来るだけなのに、不気味がられたり、病人のように思われたりして大変だね」
「クヌギの木のおじさん、ありがとう」
「今日は、おかしな鳥がお客に来てるんだ」
「どんな鳥?」
「さあ?それがさ、この辺のどの鳥よりきれいに囀(さえず)るのに、本人はまったく納得してないんだ。自分は愛の歌を忘れてしまったんだって、泣いてるんだけど、その泣き声がまたきれいでね。皮肉だろう?ほら、僕の身体で泣いてるんだ」
そんな小鳥にはなちゃんは話しかけました。
「こんにちは。小鳥さん」
小鳥は泣いています。
「いったい何があったの?」
「僕は誰よりも歌が上手かったのに……いつまでも一緒にいようって約束した恋人もいたのに……」
確かにこの嘆きの歌はとても美しく耳に届きます。はなちゃんは気を利かせて
「まあ、私が作ったおにぎりがあるから、お米を少し食べなさいな」
と小鳥に促しました。
すると小鳥の声がだんだん暖かくなってきました。小鳥自身も不思議がっています。やがて、その歌声に惹きつけられた別の鳥達も寄って来ました。
「なんだろう?はなちゃんと一緒にいると気持ちが暖かくなるな。これからいったいどこに行くのさ?」
「大きな桃の木のところ」
「え?君、あの場所に行けるの?それなら僕もぜひお供したいもんだな」
「いいよ。友達を連れて来る約束をしてたから」
クヌギの木も言いました。
「これはありがたい。小鳥の歌声もだいぶ明るくなったし、後を頼むよ。はなちゃん」
「わかった。私が桃の木のところまで連れて行ってあげる」
「よろしく。はなちゃん」
「うん。よろしく」
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