私の名は・・・

スタンフォード

私は１８歳の秋、スタンフォード大学の医学部に入学した。
ポールは私と一緒に、カリフォルニア州のスタンフォードまで着いて来てくれた。
それは父の意思ではなく彼自身の意思で決めたことだった。

ポールは自身の膨大な知識量を武器にGoogleの何かの仕事をしていると言った。その数か月後にはAppleの何かの仕事にも協力していると言った。

「いずれ君にも協力してほしい。」
とポールは言った。

その頃は、まだポールが何を企んでいるのか見当もつかなかった。

ポールは私の住居である小さなアパートから、そう遠くない高級住宅街に、庭付きのバカでかい家を買って住んでいた。
独り暮らしの彼が、なぜそんな家を必要とするのか？
「防犯のためさ。」
ポールはそう言って笑ったが、彼の家に遊びに行っても誰一人、他の人間に会うことはなく、ガードマンさえいなかった。
ただし、至る所に非常に高性能な隠しカメラやレーザー感知器が備えられ、その情報は彼の腕にはめている腕時計型の何かですべて確認できるシステムになっていた。

今から２５年以上前である。
1998年、エリクソン、インテル、IBM、ノキア、東芝の5社でBluetooth SIGを設立し、Bluetooth という名称が発表される以前の話である。
私には、彼が何か恐ろしいことを考えていなければいいけど・・・という不安さえあった。