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訪問者
この街は不思議な街だ。不思議な忘れ物がよく届く。
交番勤務の佐倉と高峰はもうベテランになる。不思議な忘れ物にはもう慣れてしまった。
高身長に屈強な体の佐倉は、今年で50を迎え、非常に落ち着きがあり、貫禄もある。
一方の高嶺は見た目は弱々しいが、頭が非常にキレ、こちらも今年50を迎える。
「すみません。そこで落とし物を拾ったんですけど……」
お昼過ぎ、11月の平日、本日初めての訪問者は、やはり落とし物の届け出だった。
40後半ほどの眼鏡をかけた男が、黒い鞄を持って物腰柔らかそうに訪れてきた。
高峰が対応した。
「落とし物ですね。中へどうぞ」
「この鞄なんですけど、そこのコンビニの向かい側に落ちているのを見かけて」
落とし物を届けた男は、山下という名だった。
書類を書いてもらい手続きを終えた、高嶺はカバンの中身を調べた。
中から大量の札束が出てきた。ざっと1000万はありそうだ。
「お金のようですね。それも大金。山下さんこのお金に心当たりは?」
「全くないです」
「そうですか。分かりました」
「あのー……、これって謝礼とかあるんですよね? 確か20%」
「そうですね。2割は届主に謝礼として渡すことになっています」
「分かりました。それでは、私はまた仕事に戻るので、これで失礼します」
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