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 「どうした、もう手はないのか?」  西日を逆光に、爺さんが余裕綽々で話す。  「なぁ爺さん。このままでは、あんたもはりごたえが無いだろ。なんかヒントくれよ」    「ほう、交渉のつもりか。だがそんなものには、一切応じないぞ。ワシのメリットが小さすぎる。それにワシは別に、ゲームを楽しんでいるわけではない。賭けに本気で勝ちに行っているのじゃ」  くそ、ドラマとかアニメならこういう時、ヒントやらハンデが貰えるのに。現実はそうはならないか。  普通に追い詰められたな……。    日が沈むにつれ、風が強く、だいぶ肌寒くなってきた。  待てよ、これだけ寒かったら、もしかしたら。  急いでスマホを取り出し、北海道の天気予報を見た。  雪マーク。  「勝負有りだな、爺さん」  スマホの画面をチラリと見せ、友達に電話をかける。    「もしもし、西山。そっち雪降ってるだろ。写真撮ってくれねーか……。え? いやそんなわけないだろ。だって最新の天気では雪って……。嘘だろ……」  そのまま電話を切った。  「おい爺さんこれもあんたの仕業か」    「もちろんそうじゃよ。最初にワシは『天候を操れる』と言ったのを聞いていなかったのか。もちろん降らすこともできるが、降っているものを降らさないようにすることも、できる」  そんな……。  「だいぶ暗くなってきたのう。もうすぐタイムリミットのようじゃ。祝いの雨でも降らすかのう」  ポツポツと小雨が降ってきた。  やばい、やばい、やばい……!
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